溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
全身から力が抜け、顔は土色を帯びていき、一刻を争う緊急性が高い事態だということが予測できる。
修さんを呼びに行こうかと思ったけれど、今の状態の会長をひとりにしておくことはできない。とりあえず今は痛みの場所を知るのが先決だ。それによって対処も変わってくる。
ぐったりしている会長の身体をまっすぐにして横たえる。そしてズボンのベルトをゆるめると、シャツの裾を出し腹部をあらわにする。
直接素肌に触れる触診が一番わかりやすい。まずは心か部からだ。
ゆっくりそこに触れて軽く圧迫する。
「うぐっ!」
痛みで手足が一瞬ビクついた。まさかと思いながら左下腹部から腸の走行に沿って腹部を触診した。次に反応を示したのは、右下腹部を圧迫して手をゆるめたときだった。
「やっぱり、ブルンベルグ徴候だ……」
身体が熱く熱を持っている。おそらく昨日まで胃部の不快感や吐き気もあったはず。すぐに病院に行っていれば、ここまでひどくならずに済んだかもしれない。
確証はないけれど、これまでの経験からわかる。腹部エコーをしなければ診断はできないけれど、恐らく虫垂炎だろう。
ここまでひどいと虫垂が破裂して腹膜炎を起こす可能性がある。そうなると緊張オペになるだろう。
破裂しなくても虫垂が炎症を起こしている状態なので、一刻も早く抗生剤の投与が必要だ。状況によってはオペもありうる。
とにかく救急車を呼ばなければ。