溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜

「柊さん! しっかりしてください! 今、救急車を呼びますからっ!」

そこでふと気づく、バッグを会場に置いてきたことに。

「あ! 生放送!」

どれくらいなのかはわからないけれど、ゆうに十分は経っているはず。夢中だったからまったく気づかなかった。でも、今はそんなことをいってる場合じゃない。

「きゅ、救急車を呼ばなきゃ」

立ち上がり絨毯の上をヒールで走るとグキッとなって転びかけた。

「あーもう! 煩わしい!」

なりふりなんて構っていられない。素早くヒールを脱ぐと両手で片方ずつそれを持ち、裸足で駆け抜ける。髪の毛だって乱れているし、じっとりと汗をかいているからきっとメイクもボロボロだろう。

せっかくかわいくしてもらったのに、これじゃあ意味ないよね。でも、会長を放ってはおけない。苦手な人だけど病人だもの。

バンッと勢いよく奥の扉を開ける。

ちょうど写真撮影をしていたのかフラッシュがパシャパシャと光り、中央には満面の笑みを浮かべる社長と拓さん、修さんがいた。

「す、すみません! 救急車をお願いしますっ!」

すぐそばにいたドアマンにそう告げると、報道陣をかき分け修さんの元へ。

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