溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
「本日は篠宮家のご一家が全員お揃いだということで、早速お話を伺ってみたいと思います。まずはトロント大出身のエリートドクターだという次男の……」
のんきに笑うアナウンサーとテレビカメラの隙間から、一番前へと踊り出る。
息が切れて苦しい。肩を大きく揺らす私に、たくさんの視線が集中した。
「えーっと、すみません、どちら様ですか? 今、インタビューの途中なのですが」
「え、あ、す、すみませんっ」
とっさに頭を下げる私に、その場がシーンと静まり返る。
「すみません、僕の婚約者です。柚、どうしたんだ?」
「篠宮先生っ! お願いします、すぐにきてくださいっ!」
テレビカメラとたくさんの報道陣を前に心臓が飛び出しそうだったけれど、まっすぐに修さんの目を見つめる。
「いったい、どうした?」
「急患なんですっ!」
場の空気が一変し、会場内がざわつく。報道陣は私の言葉を聞き逃さなかったらしい。「急患だってよ! どうする?」と密談する声が聞こえる。
「父さん、すまない。ちょっと行ってくる」
「謝る必要はない。それがおまえの使命だろ?」
「ああ。柚、どこだ?」
「こっちです!」
修さんと一緒に慌ただしく会場の外へ。テレビカメラと報道陣も数名あとを追ってきた。