溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
大きな駅なので、ロータリーには人待ちをしていると思われる車が列をなしている。
「もう少しきみと一緒にいたいと言ったら迷惑か?」
ドアノブを引っ張ろうとしていた手がピタッと止まる。普段なら絶対に流されたりしないのに、どうしてか、篠宮先生にそんなふうに言われてしまうと心が反応してしまう。
照れる様子もなく、しれっとサラッと、まるで日常会話でもあるかのように言ってのけてしまうところがもはやすごい。
私に言うくらいなのだから、きっと色んな人に言っているに違いない。私だけが特別だなんて、そんなことを思ってはダメ。また傷つくことになるのだから。
「わ、私はこれで失礼します」
「待って」
腕を引かれてドキッと鼓動が弾む。反動で振り返れば、力強い眼差しと視線が交わった。
「せめて近くまで送らせてくれないか?」
すがるような目で見られて、断ろうにも断れない。
とうとう観念した私は、その申し出を受け入れることにした。
「ロータリーを出たところの信号を右です」
肯定と捉えた篠宮先生の横顔が嬉しそうにゆるんで、彼は「了解」と言いながらハンドルを握るとギアをドライブに入れた。
シートベルトを締め直した私は、自分の膝の上で握った拳を見つめる。