溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
オペの腕前も超一流で、全国から篠宮先生に執刀してほしいという患者さんが後を絶たない。
それは仕事風景を取材したドキュメンタリーや、医療番組でのコメンテーターといった院外での活躍ぶりが拍車をかけているようだった。
そんな人が今目の前にいて、私に笑いかけている姿を見るとどうしても固まってしまう。
私が彼を警戒する理由は、それだけではないのだけれど。
「フリーズしてるところを悪いんだが、このあとすぐオペに入らなければならない。今のうちに回診したいんだ」
笑いを含んだ声がして赤面してしまった。すぐに赤くなってしまう自分が恥ずかしい。
「す、すみません! わかりました、すぐに準備しますね」
仕事中なのだ、しっかりしなくては。
回診は本来ならその日の受け持ちナースがつくはずなのだが、部屋回りにでも出ているのか見当たらない。
篠宮先生も手が空いた時に回診に訪れるので、時間は決まっておらず、受け持ちナースがいないなんてこともよくあることだった。
私がつくしかないかな。
「松浦さん、すみません。すぐに戻りますので、回診に行ってきてもいいですか?」
西棟と東棟は独立していて、それぞれにその日のリーダー業務を担うナースがいる。