溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
土地勘もないのだから、よっぽどだろう。
地下駐車場には高級車ばかりがズラリと並んでいて、さらには本当に都心かと思えるほどの広々とした空間だ。
「あ、あの、ここは?」
「俺の住むマンションの駐車場」
「えっ?」
篠宮先生のマンション。今夜は帰したくないって言われたのだから、こうなることは予想していた。改めてそう告げられると顔がカーッと熱くなる。
今さら後悔しても、もう遅い。
車を下りると地下駐車場からはエレベーターに乗って地上へと上がる。おおかた察しはついていたものの、エレベーターの中は超一流ホテルを思わせるような高級な造りになっていて、鏡張りの箱の中、自分の姿が映ってすごく恥ずかしかった。
ロビー階に着いたのかポーンと軽快な音が鳴って、扉が開く。さっきから篠宮先生の顔が見られないのは、不安と緊張からだろうか。
「行こう」
そう言われ手をギュッと握られる。すかさず引っ張られ、私はそのまま外へ出た。
大理石でできたようなリノリウムの床と、吹き抜けの天井にはゴージャスなシャンデリアが吊るされている。ロビーは塵ひとつ落ちていないきれいな空間だ。
都心のタワーマンションかなにかなんだろう。フロントにはコンシェルジュがいて、私たちの姿を見ると慣れたように一礼する。
その仕草までもが洗練されていて、この場の雰囲気にピタリと合っている。ワンランクどころか、すべてにおいてちがいすぎてついていけない。