溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
ソファーもテレビもローテーブルも、すべてが洗練された調度品で部屋の中全体の家具の配置やバランスもいい。
「モデルルームをそのまま買ったんだ。家具はほとんどそのままだが、気に入らずに変えた物もある。ゆっくり寛いでくれて構わないから」
「は、はい」
そう言われ部屋の奥のソファーまでゆっくりと進む。バスローブ姿なのが少し気恥ずかしい。外に面している部屋の壁の部分は窓なのだろう。
総ガラス張りになっているのか、天井から床すれすれまでシェード生地のシンプルなブラウンのカーテンが引かれている。
それにしても、モデルルームをそのまま買ったなんてサラッと言えるところがすごい。
「コーヒーは飲める?」
「あ、いえ、紅茶でお願いします」
「了解」
しばらくすると湯気が立ち昇るマグカップを手に、篠宮先生は私がいる斜め前へと座る。クッション性のあるソファーの座り心地は最高で、肌に触れるレザーが身体の形に合わせて沈む。
マグカップが目の前に差し出されると、ハーブのいい香りが漂ってきた。
「ありがとうございます」
長い足を優雅に組み、コーヒーを口にする篠宮先生は間違いなく極上の男性だ。
そんな人が私と結婚したいなんて、普通に考えたらありえないこと。
「篠宮先生には、お付き合いしている女性はいらっしゃらないんですか?」
「いたら、きみに声なんかかけないよ」
なにを言っているんだというような怪訝な瞳。
私は拳をぐっと握り締めて息を吐き出すように言葉を紡ぐ。
「そんなことないです。世の中には本命の彼女がいても、遊び相手がほしいっていう男性もいるんですから」