溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
必死に懇願され、断りきれない私がいる。
これもまた流されているだけなのだろうか。バスローブのポケットからスマホを出すと、篠宮先生は嬉しそうに目を輝かせた。
この表情は嘘じゃないと信じたい。そう、心の底では信じたいのだ、男の人を。でも、怖い。また裏切られたら……今度こそ私は立ち直れない。
番号を告げると篠宮先生は長い指先で番号をタップし、私のスマホにダイヤルする。これで繋がってしまった。
「ありがとう、なにかあったらいつでも遠慮なく電話してくれ」
「はい、なにかあったらですね」
「いや、なにもなくても、だ。俺の方からも、毎日連絡する。なんなら、ここに引っ越してきてくれても構わないんだが、そう言うときみはまた逃げて行きそうだからな」
「言ってるじゃないですか!」
突拍子もないことを言われることに慣れたのか、突っ込みのほうが先に出た。
この人は自分がなにを言っているか、わかっているのだろうか。
「ははっ、おやすみ」
さっと立ち上がるとコーヒーカップとマグカップを手にシンクへと持って行く。そして柔らかい笑みを残して奥の部屋へと消えて行った。
どうやらなにもしないという約束は守ってくれているらしい。つまづいて私が押し倒したときも、さっと離してくれた。
本当によくわからない人だ。