溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
頼りになる背中
目が覚めると知らない天井が見えた。上質なシーツの感触とふかふかのベッドの寝心地のよさに、開いたまぶたが徐々に下がってくる。
そういえば、私、昨日……。
まどろみの中でふと昨日の出来事が蘇って、ハッと身体を起こす。
ここは篠宮先生のマンションの一室だ。昨夜、あれから私もすぐに部屋に戻り眠りについた。スマホで時間を確認すると七時を過ぎたところだった。
バスローブから昨日の服に着替え、荷物をまとめて寝ぐせのついた髪をブローしながら身支度を整える。そしてシーツのシワを伸ばし、できるだけきれいに整えてから部屋を出た。
リビングのドアを開けると、キッチンに立っていた篠宮先生が私に気づき明るい笑みを向けてくる。
「おはよう、早いな」
「おはようございます」
フライパンを器用に扱いながら、キッチンの後ろの棚では本格的なコーヒーメーカーがコポコポと音を立てている。部屋中にコーヒー豆のいい香りが立ちこめて、なんとも清々しい朝だ。
昨夜はカーテンが閉まっていたけれど、総ガラス張りの窓からは快晴の空が広がっている。
「よく眠れた?」
「はい、おかげさまで」
「それはよかった。座って待ってて。今朝はコーヒーでいいか?」
「あ、はい」
キッチンで忙しなく動き回る篠宮先生は、どうやら朝食作りの最中らしく、片手で卵を割ってフライパンに落とすと慣れた手つきでかき混ぜ始めた。
ハムエッグにレタスとトマトのサラダ、トーストにコーヒー、さらにはヨーグルトのブルーベリーソース添えまで。なにをしても完璧らしい篠宮先生は、盛り付けもきれいで食器にまでこだわっている。まるでホテルの朝食のようだ。
「大した物じゃないが、遠慮せず食べてくれ」
「ありがとう、ございます……」
仕事だというのに私の分まで用意してくれるなんて、ちょうどお腹が空いた頃だったからありがたいけれど、申し訳ない。
強引に連れてこられたとはいえ、ここまでよくしてもらえるとは思ってなかった。