溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
困っていると察してくれたのか、それ以上なにも言われることはなかった。なんだか緊張してしまい、目を合わせられない。
篠宮先生は濃い目のジーンズに白の五分袖丈のシャツを着て、意外とカジュアルな格好だ。スタイルがいいからなにを着てもおしゃれに見えるのが羨ましい。
「部屋のアメニティで足りない物はなかったか?」
「だ、大丈夫です。それにしても、品揃えが豊富というか……よく女性が泊まりにいらしてるんですね」
ちょっと皮肉っぽかったかな。だけど本音だ。甘いセリフを吐くくせに、他の女性の影を匂わせるところに少しだけモヤッとしている。
心外だとでもいうように大きく見開かれる篠宮先生の瞳。
「そんなんじゃないんだ。兄貴が……」
初めて篠宮先生の表情に影が落ちた。意味深な表情を浮かべて、罰が悪そうに私からパッと目をそらす。
そのとき、タイミング悪くスマホのアラームが部屋の中に響き渡った。
「す、すみません」
カバンの中を探ってスマホを取り出しアラームを止める。今日は休みだというのに、昨日の朝セットしたアラームを解除するのをすっかり忘れていた。
「それで、あの」
「いや、なんでもない。とにかく、やましいことはなにもない。信じてくれとは言わないが、俺は嘘偽りは言わないよ」
篠宮先生にさっきまでの表情はなく、落ち着きを取り戻しいる。