溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
渋谷に降り立ち改札を出る。駅直結のホテルの中の和食のお店にすでに移動したらしく、私はそのままホテルへと向かう。
ようやくお店を見つけ、暖簾をくぐって中に入る。小洒落た創作和食のお店で、ホテル内にあることもあり、どこかきっちりしているイメージ。
店員さんに予約の名前を告げると席へと案内してくれた。
「柚、遅いじゃないの」
いの一番に私の姿を見たお母さんが、やんわりと攻撃してくる。
「これでも急いできたんだから褒めてよね。こんばんは、留美子さん、沙羅ちゃん。お兄ちゃんも、あ、お父さんもね」
ぐるりとみんなの顔を見回してニッコリ笑い、お母さんの隣の空いていた席に着く。駅にはたくさんの人がいたのに、お客さんはそこまで多くなく、全体の七割ほどだ。
「柚、久しぶりだな」
目の前に座るスーツ姿のお兄ちゃんがニッコリ微笑む。お兄ちゃんは爽やか系のイケメンだ。
「ええ、ずいぶん大人っぽくなったわね。沙羅も、ほら挨拶は?」
「こんばんは、柚ちゃん」
「沙羅ちゃん、また大きくなってる。かわいい」
「当然だろ、俺の娘なんだから」
「はいはい、お兄ちゃんは相変わらずだね。でも、沙羅ちゃんは留美子さん似だよ。お兄ちゃんの要素はどこにもない」