溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜

いつも強気なお母さんの涙を見るのは初めてで、よっぽどお父さんが心配なんだろう。

「ええ、任せて下さい。大事なご家族を守るために僕がいるので」

私含む家族にとって医師としての篠宮先生の言葉は、胸に響いた。優しく安心感のある声にホッとさせられて、お母さんの表情が一気にゆるむ。お兄ちゃんも正気を取り戻したようで、深々と頭を下げている。

沙羅ちゃんは留美子さんの手をギュッと握って、幼いながらもなにかを感じ取っているようだ。

自信家でこうと決めたら突っ走る篠宮先生の背中が、今はとても大きく頼もしく見える。この人に任せておけば大丈夫だという根拠のない自信が沸々と沸き起こった。

医師として今までたくさんの境地を乗り越えてきたであろう篠宮先生だからこそ、ここまで自信たっぷりに言えるのかもしれない。

改めて器の大きさを感じさせられて、頭が下がる思いだった。

「では、失礼します」

白衣の裾を翻しミーティングルームを出て行く篠宮先生。足早に立ち去るその背中から目が離せなかった。

手術の時間はだいたい五〜六時間だということが推測できる。このまま入院になるだろうと、ぼんやりした頭で考える。

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