溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
それは看護師という職業のせいなのかもしれない。家族会議の末、お母さんと私が病院に残ることになり、お兄ちゃん一家は一旦家に帰ることになった。
お母さんは両手を合わせたまま天井を見上げて、涙をこらえている。
「私がもっと早く異変に気づいてあげられてたら……ここまでにはならなかったのに」
「それを言うなら私もだよ。お父さん、明らかにおかしかったのに」
「いいえ、お母さんの方がずっとお父さんと一緒にいたのに、いつもの二日酔いだと思って」
どんより暗い気分になる。お母さんは、とうとううつむいてしまった。
「仕方ないよ、今は篠宮先生を信じよう?」
「そうね、そうだわ。柚の花嫁姿を見るまでは、絶対に死ねないっていつも言ってるもの。大丈夫よね」
「お父さん、そんなこと言ってるんだ」
「そうよ? 酔っ払うと、いつもより饒舌になるんだから。あなたの話か沙羅ちゃんの話しかしないわよ」
「へえ、あはは」
お父さんらしいや。
「わかってはいるのよ? 急かしてはいけないって。でもねぇ、こんなことがあるとやっぱり柚にも早くいい人を見つけて幸せになってほしいと思うの。私たちの心残りはそれだけよ」
「べ、べつに結婚がすべてじゃないでしょ? 今は独身の人も多いんだし」
すぐまたそっちの方に話を持っていくんだから。
「そうね。でも、親は子どもの幸せを願うものなのよ。お父さんもお母さんも昔の人間だから、やっぱり柚には家庭を持って幸せになってもらいたいわ」