溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
スクラブの下からは鎖骨が見えて、こんなときなのに昨日見た上半身をリアルに想像してしまう。
わ、私ったら、なにを考えてるの。
「柚?」
「え、わっ!」
顔を上げるとすぐそばに整った顔があった。思わず目を剥き後ろへ下がって距離を取る。その瞬間、パイプ椅子に足が取られて身体がよろけた。
「危ないっ」
力強くたくましい腕が腰に回され引き寄せられる。
「まったく、これだから目が離せない」
「な、なにをするんですか」
両手を腰に回されて、背中に手が伸びてきた。こんな抱きしめられているみたいな格好、他の誰かが見たら勘違いしてしまう。
それでもこの腕を振りほどけないのは、どうしてだろう。
「よく頑張ったな。えらいえらい」
「なっ、子ども扱いしないで下さい」
「いやいや、褒めてるんだよ。家族の前で取り乱さないように必死に耐えていた柚のことをね」
ポンポンと頭を撫でられ、胸にジワッと安心感が広がる。どうしてだろう、篠宮先生の腕の中はとても居心地がいい。
「もう大丈夫だから、安心しろ。俺がいて、助からないわけがないだろ?」
どうしよう、グワッと胸にきた。さらにはキツく抱きしめられて、これまでにないくらい心臓が早鐘を打っている。
悔しいけれど、安心させられてしまっていることに気がついてなにも言えなくなる。