溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
「ありがとう、ございます……たしかに自分がしっかりしなきゃって、気を張ってたかもしれません」
「無理もない、家族の一大事だ。俺もいつも以上に緊張したよ」
「篠宮先生でも、緊張とかするんですね」
「どういう意味だ、それは」
「いつも自信満々だから、緊張してるようには見えないです」
「今こうしているときほどの緊張はないけどな」
そう言われてドキッとする。さらにキツく抱きしめられて息が、胸が苦しい。
「こうしていると、落ち着くよ」
「は、離して下さい。病室ですよ?」
「無理だ。昨日はなにもしないと誓ったが、今日もそうだとは言ってない」
そんなセリフを耳元で囁くように言われて、顔がボッと熱くなる。
「か、からかわないで下さい」
「からかってなんかいない。柚、俺は」
ドクンドクンと篠宮先生にだけ過剰に反応する鼓動。
「きみのことを大事に想ってる」
胸に甘い衝撃が走った。
「だから、遠慮せずにどんなときでもこの俺を頼れ。精いっぱい力になりたいんだ」
胸にグッとくるこの感覚はなんだろう。まっすぐに突き刺さって、昨日から私はおかしい。
「ここだったかしら? 柚? お父さん?」
部屋の引き戸がスッと開いて私は思わず篠宮先生の身体を思いっきり押した。
「うおっ」と小さく呻いた先生は、お母さんの気配に気づいて医師の顔つきに戻る。
「あら、合ってたわ。それにしても広いわね、あんたの働く大学病院とやらは」