溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
手術の日からなにかとバタバタしてしまい、気づくとあっという間に今日までの時間が過ぎていた。聞き間違いじゃなければ、あの日篠宮先生は私を大事に想ってると言った。
それはどういう意味だったんだろう。
あれからきちんと話す機会もなく、その後の連絡も手術当日の帰りに無事にタクシーで帰り着いたことと、お代を先払いで払ってくれていたことに対するお礼くらいのもの。
波が一気に引いてしまったかのように、あれから篠宮先生からのアプローチもなければ連絡もない。
毎日すると言っていたのに、結局は口だけだったのかとガッカリしたけれど、これじゃあ篠宮先生からの連絡を待ってるみたいじゃないかと思い直して頭を左右に振った。
毎日が物足りなく感じてしまっているのは由々しき事態だ。
いざ病棟で会うと篠宮先生はあっさりするほどいつもと変わりがないから、拍子抜けしてしまったのもまた事実で、あんなことを言われて意識していたのは私だけだった。
「あ、それからお父さん、いや日下部さんだが、縫合不全の兆候もないし順調に回復してる。今日から飲水を始めてもらって構わないから」
「はい、わかりました。ありがとうございます」
歩きながら電子カルテを操作する篠宮先生の横で、私は軽く頭を下げた。