溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
「それと、あれから大丈夫か?」
篠宮先生は言いにくそうに口を開くと、頬をポリッとかきながら私に訊ねる。医師として、父だけではなく、私の心配もしてくれているのだろうか。
「はい、大丈夫です。これであとは退院を待つだけですので」
「いや、そうじゃなくて」
「え?」
私は上目遣いの視線を篠宮先生に向けた。まぶしいほどの太陽の光を背に、篠宮先生がまっすぐ私を見下ろしている。
その目はどこか不機嫌そうだ。
「MIYAMOの宮本、だっけ? あれから会ったのか?」
「ど、どうして、そんなこと」
「あの日、明らかに様子がおかしかっただろ? きみの口からはっきりしたことが聞けなかったし、連絡しようと思ったんだが、事情が事情だし大人しくしていたんだ」
篠宮先生なりに、この数日の間に私に起こった目まぐるしい事情を察してくれていたらしい。
「そう、だったんですか」
篠宮先生は私のことを気にしてくれていたんだ?
連絡もしようとしてくれていたなんて。どうして私、それを聞いて嬉しいだなんて思っているの。
「どうなんだ?」
「会って、ません。今の今まで、そんなことはすっかり忘れていました」
優の存在は所詮私にとってその程度。あの日再会して多少は動揺したけれど、次に会っても前ほどの驚きはないような気がする。
「そうか」
「はい」と小さく頷くと、ホッとしたように篠宮先生の横顔がゆるんだ。