終われない青春
「2年C組の古葉サユリです。よろしくお願いします」
「3年F組の長谷川タクトです。一緒に会計委員会の仕事を頑張りましょう」
 古葉さんは、自ら副委員長に立候補してきた。委員会の役職には付きたくない人が多いので、やる気のある人だなと思った。ちなみに、タクトは昨年自分から副委員長に立候補した。会計委員会では、2年生の時に副委員長になった者が3年生になったら委員長を務めるという伝統がある。タクトは、リーダーになれるチャンスは滅多にないと思い、立候補したのであった。
 昔から人前で話すのが苦手だったタクトとは違い、古葉さんは委員会の集まりでも堂々と話していた。また、パソコンの操作にも慣れており、機械オンチなタクトは何度も古葉さんに助けられていた。
 あるとき、放課後のコンピュータ室で仕事をしているときのことだった。生徒総会が近づいており、タクトは最終下校時刻ぎりぎりまでパソコンにデータを入力していた。
「古葉さん、申し訳ないんだけど、このデータをエクセルでグラフにしてくれませんか」
 エクセルの操作が分からなかったタクトは、隣で書類のチェックを行っていた古葉さんに助けを求めた。
「いいですよ。これをグラフにまとめればいいんですね」
 ものの5分でグラフは出来上がり、生徒総会で配付する資料は完成した。
「いつもごめん。大変な仕事を古葉さんに任せてしまって」
「いえいえ、簡単な作業ですから。誰にでも苦手なことはあります。それを含めて、長谷川先輩ですよ」
「ありがとう。いつも本当に助かってるよ。コンピュータ室のカギは僕が職員室まで返しにいくよ」
 面倒な仕事を引き受けてくれたので、カギくらいは自分で返しに行こうと思った。
「私も一緒に行きましょうか」
「大丈夫だよ。仕事頑張ってくれたから先に帰りな」
 サユリは少し残念そうな表情を浮かべるが、タクトは気づかない。
「ありがとうございます。お先に失礼します」
「さようなら。気をつけて」
 古葉さんに挨拶を済ませると、職員室にカギを返しに行った。
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