花とバスケと浴衣と

そのまま地下道を通って駅の近くでランチにしようという話になった。
「千花ちゃん何か食べたい物ある？」
「んー特にないですけど、類先輩は何かありますか？」
「昨日の夜、ちょっと飲みすぎて食べすぎたから…あんまり食べたいものもないかな。」
「じゃぁ、お蕎麦とかどうですか？」
「蕎麦か。いいね。でも、千花ちゃんそれで良いの？」
「まだ今期に入ってざるそば食べてないからざるそば食べたいなと思って。」
「ざるそばか。千花ちゃん結構渋いね。」
「え？そうですか？」
「オレの中で、女の子を連れていく店のチョイスに蕎麦屋はなかったから。」
類先輩が笑いながら言った言葉に、千花はすこし顔を赤らめた。
「…すみません。何か別のものにしますか？」
「いや、ごめん。余計なこと言った。オレも蕎麦好きだから、千花ちゃんがいいなら蕎麦にしよう。」
確かに、類先輩に言われて、デートで男の人と一緒に行くお店のチョイスに蕎麦屋はないな、と千花も思った。ただ、二日酔いでも食べられそうな物が、お茶漬けか蕎麦ぐらいしか千花には浮かばなかったのだ。お店に入ると、カウンター席が丁度2席空いていた。
「カウンターで良いの？」
類先輩が不思議そうな顔で聞くので、千花は、他を見渡した。
「ここしか空いてないみたいですけど、類先輩テーブル席の方が良いですか？」
「いや、千花ちゃんが良いならオレは全然問題ないよ。」
綺麗に微笑む類先輩の顔を見て、千花はテーブル席で向き合って食べるより、カウンター席で並んで食べた方が緊張せずに食べられそうだなと思ったが、類先輩の反応から普通のデートならカウンター席はないんだろうな、と千花は思った。二人共ざるそばを注文し、ズズズっと音を立てながら、ざるそばを食べた。
「んー。うまい。これなら大盛りでも食べれたな。」
嬉しそうな顔で類先輩が言うので、千花も嬉しくなった。二人で美味しく食べれたならなんでも良いや、と千花は思った。