花とバスケと浴衣と
カフェを出て、駅まで送ってくれた類先輩と別れ、千花は家に帰った。類先輩に言われたことを思い返しながら、類先輩のことを考えた。カッコよくてモテすぎるのも大変なんだな…と千花は改めて思った。千花も類先輩の気持ちは少し共感できたし、二人で出かけてみて色んな話ができて楽しかった。また類先輩と色々なことを話してみたいなと思った。寝る前に類先輩にお礼のラインをしようと思い、ふと、今日の反物のお金を払っていないことを思い出した。千花は慌てて類先輩に電話をかけた。
「もしもし?千花ちゃん?」
「類先輩、すみません。今大丈夫ですか?」
「うん。どうかした?」
「あの、私、反物のお金、お返しするのすっかり忘れたまま帰ってしまって。」
「あぁ、あれなら気にしなくて良いよ。」
「はい?」
「プレゼントってことで。」
「はぁ?何言ってるんですか?絶対ダメですよ。」
「いいよ。お昼は千花ちゃんが払ってくれたんだし。」
「いや、金額が違いすぎますよ。こういうのはちゃんとしとかないとダメですよ。私の浴衣なんですから。それに、ただでさえ、類先輩のお祖母様に縫っていただくのに。」
「そんなの気にしなくていいのに。」
「気になりますって、普通。」
「そういうもの?」
「そういうものです。」
「レシート一緒になっちゃってるけど。」
「レシートは別にいいです。私の反物と帯の金額だけ教えてもらえたら。」
「あぁ、ちょっと待って…反物は8000円で、帯は2500円だから、一万円で良いよ。」
「すみません。明日ちゃんとお返しします。」
「そんなの忘れたままで良かったのに。」
「ダメですよ。ちゃんと帰るまでにお返ししようと思ってたのにすみません。」
「気にしないで。これでまた千花ちゃんに会える理由ができたわけだし。」
嬉しそうな類先輩の声に、千花は一瞬ドキッとした。
「明日オレ、授業昼からで、そのまま33の練習に行くつもりだけど、千花ちゃんは4限までびっしり授業?」
「そうですね。授業後もバイトです。」
「じゃぁ明後日の昼にしようか。明後日は二限目の授業あるからさ。お昼に図書館のカフェでどう?」
「はい。大丈夫です。」
「ん。じゃぁまた明後日ね。おやすみ、千花ちゃん。」
「はい。おやすみなさい。」
おやすみなさいって何か照れるな…と千花は思いながら電話を切った。

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