花とバスケと浴衣と
授業が始まってしばらくすると、同級生たちも色々なサークルに入り始めた。千花も、色々なサークルの見学に行ってみたが、イマイチぴんとくるものがなく、まだ何のサークルにも入っていなかった。4月が終わろうとする頃に、スリーオンスリーのサークルにめちゃめちゃカッコイイ男の人がいるという情報を、同級生の女の子から聞いた。33というサークルには、イケメンが揃っているらしく、しかし、サークルとは言え、結構本格的なスポーツサークルで男子しか入っていないらしい。マネージャーのような女性も居ないが、33応援サークルなるものが存在し、女子はそのサークルに所属し、試合の応援等に行っているという情報を聞いた時、千花は、きっと草下類先輩がいるサークルだろうと思った。スリーオンスリーと聞いていまいちピンとこなかった千花は、スマホで検索し、ストリートバスケのことだと知った。バスケサークルなんて千花には無理だ。どうしたら類先輩に近づけるだろう?一度見に行ってみたいが、ただの応援サークルに入るのも面白くない。どうせなら、もっと何か生産性のある違うサークルに入りたい。ふと、名案が浮かんだ。ミマがいる!そうだ、ミマを誘って、33の練習を見に行こう、と千花は思った。
「ねぇ、ミマ。33ってサークル一緒に見に行かない?」
「33?何のサークル?」
「スリーオンスリー」
「千花スリーオンスリーなんかやるの?」
怪訝そうな顔で見つめる美馬に、正直に千花は答えた。
「やったことない。」
「だよね。で、何で急にスリーオンスリー?」
「そのサークルに所属してる草下類先輩に近づきたいの。」
「はい?」
「お願い、ミマ。一緒に見に行くだけでいいの。後は自分で何とかする。入部出来るとは思ってないし、バスケなんか出来るわけ無いってわかってる。でも、どうしても一度ちゃんと話したいの。」
真剣にお願いする千花を見て、ミマは驚いたように言った。
「千花ってそういうタイプだったっけ?ちょっと意外。」
「だよね…。こんなの初めてで、ホントのこと言うと、私もちょっと戸惑ってる。でも、この気持ちを大切にしてみたいなって思ってて。こんなに誰かが気になることって今までなかったからさ。モヤモヤするのも嫌だし、ちゃんと知りたいんだ。類先輩のこと。」
千花が正直な気持ちを話すと、ミマは少し考えるようにして、
「そっか。」
と呟いた。あまり無理強いしても仕方ないと思い、その日はそれで引き下がった。33の練習日を聞きつけて、練習がある日毎にミマに声をかけ、放課後の予定を聞いた。結構な頻度でバイトに入っているようで、中々練習日とかち合わず、ミマを誘うのは難しいのかな?と半分諦めながら、ミマに声をかけた。
「ねーミマ、今日もバイト?」
「ううん。今日は休み。」
「じゃぁさ、33の練習あるみたいなんだけど、ね、見に行くだけでいいから。お願い美馬。一緒に来て。」
「うん、いいよ。」
「え?ホントに?」
「うん。千花の本気がわかったから、つきあうよ。」
「ホントに?ありがとう、ミマ。すごい嬉しい。」
まだ5月なのに午後から日差しとともに気温がぐんぐん上がり、長くなった日は、放課後の時間でもまだ十分に降り注いでいた。ミマの気が変わらないうちに、急いで屋外のコートへ向かって走った。既に練習?なのか試合なのかよくわからないが、始まっていて、コートの中に類先輩が立っていた。やっぱりココに居た。必死で類先輩を目で追って、日向に突っ立ったまま、しばらく見ていると、休憩になった。焼けるのも気にせず、見学をしていたせいか、休憩になって急に暑さを感じた。
「やっぱりめっちゃカッコイイよねー、類先輩!!」
「確かにキレイな顔の人だね。千花が夢中になるのは納得だわ。ファンも多そうだしね。」
「美馬がライバルになるのは嫌だなー。」
「その心配は必要ないから。」
良かった、と思いながら、休憩でベンチに座っている類先輩から目をそらせず、じっと見ていると、
「ちょっと、千花?大丈夫?熱中症にでもなってるんじゃない?顔真っ赤だよ。」
ミマの声が聞こえたが、その瞬間、俯いていた類先輩が千花の方を見て、しっかり目があった。え、嘘。目が合っちゃった。どうしよう。千花はドンドン頬が火照ってくるのがわかった。
「おーい、千花?」
ミマが必死に肩を叩いているのに気づいた。
「どうしよう、ミマ!類先輩がこっち見てる…。」
「わかったから、とりあえず水飲んで座ってて。私今何か冷たいの買ってくるから。」
走り去ったミマに、え、ミマ何?まだ行かないでよ。もう少し一緒に類先輩を見ていようよ。気がつくと、千花は、その場にしゃがみこんでしまっていた。暑い…。結構長い時間まともに日差しを浴びていたらしい。頭を触るとすごく熱くなっていた。
「大丈夫ですか?」
33のメンバーらしい男性が二人、千花の側に来て話しかけた。
「熱中症じゃない?ココで倒れられると困るんで、ちょっと建物の中に移動しようか?」
「立てる?」
手を指し出されて、いや、ミマがもうすぐ来てくれるから大丈夫なんだけど、触らないで。出された手を拒否する千花を見て、男性は日陰で見ていた女の子たちに声をかけた。
「ごめん、彼女熱中症っぽいから、部室で休ませたいんだけど、オレたち怖がられちゃってるみたいだから、悪いんだけどちょっと手伝ってくれない?」
声をかけられた女の子たちが嬉しそうに近づいてきて、手を貸して立たせてくれた。部室棟まで女の子たちが一緒に上がってくれて、部屋に入ると、椅子を進められ、男の人が冷たい液体をくれた。
「スポーツドリンクだから、安心して飲んで。彼女たちも、手伝ってくれたお礼にどうぞ。」
言われるままに飲むとポカリのような味で、確かにスポーツドリンクっぽかった。予想外にのどが渇いていたようで、ゴクゴクと飲み干すと、女の子の一人が聞いてくれた。
「大丈夫?」
「すみません。大丈夫です。なんか暑さとか考えず、夢中になちゃって…」
「分かるけど、日向で見るなら日傘くらいささないと真っ黒焦げになっちゃうよ。」
「そうそう。見学者が倒れると迷惑かけるから、今度からは気をつけなよ。」
「はい。本当に気をつけます。すみません。」
千花が素直に謝った。
「一緒に見てた背の高い子は?」
「あ、ミマ。多分購買に何か冷たいもの買いに走ってくれて…。」
「そっか。じゃぁ、私たちはそろそろ下に戻るね。」
連れてきてくれた女の子たちは戻っていった。しばらくすると、
「連れてきたよ、ミマさん。」
と男性がミマを連れてきた。
「千花!大丈夫?」
「ごめん美馬。大丈夫。」
ミマは千花の頭に購買で買ってきた氷をのせてくれた。
「冷たくて気持ちい。」
「これも飲んで。」
「さっきもらって飲んだからもう大丈夫。」
「さっきのは水だよ。水じゃなくてこっちの方が良いから。」
「大丈夫。ちゃんとここに来てポカリ飲ませたから。」
ポカリのペットボトルを見せながら、先程とは違う背の高い男性が言った。
「そうだったんですか。すみません。ご迷惑をおかけしました。」
「よくあることだから、気にしないで。」
千花の代わりに謝ったミマが顔を上げて男性を見ると、男性は笑顔で言った。
「ミマちゃん、やっと思い出してくれた?」
「長谷部先輩…?」
長谷部先輩ってどこかで聞き覚えがある。男性の顔をもう一度見直した。
「圭悟の知り合い?」
「あぁ、高校ん時の後輩。髪型違うから、一瞬わからなかったよ。ミマちゃんうちの大学だったんだ。」
「私も長谷部先輩がここにおられるって知りませんでした。」
「えー、そうなの?てっきりオレを慕ってここに来てくれたのかと期待したのに。」
「えっ!長谷部先輩って、あの2個上のバスケ部の超人気のあった?」
思い出したと同時に千花が言うと、楓は苦笑いで千花を見た。何でこんなに嫌そうなんだろう?
「ってことは、君も三高出身?」
千花が思いっきり頷くと、氷を入れたビニールが頭から落ちた。あっと思うと、ミマの手より早く、長谷部の手が先にそれを掴んだ。
「あぶねー。落としたら服濡れるよ。ミマちゃん、相変わらず良い瞬発力してるね。」
「すみません。」
「で?何?ミマちゃんも久々にバスケやりたくなってきたわけ?」
「そうなんですよ。ミマが久々にバスケやりたいって言うから、サークル見に行ってみようってなって今日来てみたんです。」
ミマが答える前に、話に乗ってしまおうと、千花は答えた。
「千花、何言ってんの?」
ミマの呟きを無視して、
「やっぱり、そうか。お前バスケめっちゃ好きそうだったもんなー。県大会もミマちゃんの代は結構いいとこまで行ったんだろ?経験者大歓迎だよ。」
長谷部は嬉しそうに被せて言った。やっぱり、この人、ミマ狙いだ。千花は、軽く睨んでくるミマにお願いと両手を合わせてウインクをした。ミマが否定をしようとしすると、ガチャっと部室のドアが開き、試合が終わったらしいメンバーが汗を拭きながら入ってきた。
「お前らまた部外者を部室に連れ込んで…藤山さんに怒られんぞ。」と入ってきた一人が千花たちを一瞥して言った。ミマを連れてきた男性が、
「いや、オレたちじゃないっすよ。ルイさんの指示でここで休ませてるだけですから。」と言うと、後から入ってきた類が
「あぁ、悪かったなノブ。休憩中に真っ赤な顔してぶっ倒れそうになってる子が見えたから、倒れられる前に運んでもらおうと思って、オレがノブに頼んだんだ。藤山さんも了承済。」と言った。あー、類先輩だ!と思うと、千花の側まで来て、顔を覗き込み、
「もう大丈夫そうだな。」と言って微笑んだ。千花はその声に顔を真っ赤にした。
「もう立てそう?」
とミマにつっつかれ、千花が頷くと、
「試合中にご迷惑をおかけしてすみませんでした。失礼します。」
ミマは千花の腕を取って、立たせようとした。
「ミマちゃん、まだ入部届書いてないよ。」と長谷部の声に
「入部?」と類先輩が呟いた。
「圭悟の後輩で、バスケ経験者らしいっすよ。」
「圭悟の後輩ってことは、三高?」
「三高って去年結構強かったんだよね?」と口々に話す人たちに、
「いや、あの入部希望っていうわけではなくて、千花に誘われてちょっと見に来ただけなんです。」とミマが言った。類先輩が千花を指しながら
「千花ってこの子?」と聞いた。名前を呼ばれて驚いている千花を横目に、ミマが
「そうです。」と答えた。
「とりあえず、ちょっとB棟のサロンで待っててくれない?オレたちシャワーして着替えたらそっち行くから。」と類先輩が言った。
「え?」聞き返すミマに、
「良い?千花ちゃん。B棟のサロンで待っててね。」と今度は千花に向って微笑んで言った。千花は頬を染めて
「はい。」と答えていた。
「ねぇ、ミマ。33ってサークル一緒に見に行かない?」
「33?何のサークル?」
「スリーオンスリー」
「千花スリーオンスリーなんかやるの?」
怪訝そうな顔で見つめる美馬に、正直に千花は答えた。
「やったことない。」
「だよね。で、何で急にスリーオンスリー?」
「そのサークルに所属してる草下類先輩に近づきたいの。」
「はい?」
「お願い、ミマ。一緒に見に行くだけでいいの。後は自分で何とかする。入部出来るとは思ってないし、バスケなんか出来るわけ無いってわかってる。でも、どうしても一度ちゃんと話したいの。」
真剣にお願いする千花を見て、ミマは驚いたように言った。
「千花ってそういうタイプだったっけ?ちょっと意外。」
「だよね…。こんなの初めてで、ホントのこと言うと、私もちょっと戸惑ってる。でも、この気持ちを大切にしてみたいなって思ってて。こんなに誰かが気になることって今までなかったからさ。モヤモヤするのも嫌だし、ちゃんと知りたいんだ。類先輩のこと。」
千花が正直な気持ちを話すと、ミマは少し考えるようにして、
「そっか。」
と呟いた。あまり無理強いしても仕方ないと思い、その日はそれで引き下がった。33の練習日を聞きつけて、練習がある日毎にミマに声をかけ、放課後の予定を聞いた。結構な頻度でバイトに入っているようで、中々練習日とかち合わず、ミマを誘うのは難しいのかな?と半分諦めながら、ミマに声をかけた。
「ねーミマ、今日もバイト?」
「ううん。今日は休み。」
「じゃぁさ、33の練習あるみたいなんだけど、ね、見に行くだけでいいから。お願い美馬。一緒に来て。」
「うん、いいよ。」
「え?ホントに?」
「うん。千花の本気がわかったから、つきあうよ。」
「ホントに?ありがとう、ミマ。すごい嬉しい。」
まだ5月なのに午後から日差しとともに気温がぐんぐん上がり、長くなった日は、放課後の時間でもまだ十分に降り注いでいた。ミマの気が変わらないうちに、急いで屋外のコートへ向かって走った。既に練習?なのか試合なのかよくわからないが、始まっていて、コートの中に類先輩が立っていた。やっぱりココに居た。必死で類先輩を目で追って、日向に突っ立ったまま、しばらく見ていると、休憩になった。焼けるのも気にせず、見学をしていたせいか、休憩になって急に暑さを感じた。
「やっぱりめっちゃカッコイイよねー、類先輩!!」
「確かにキレイな顔の人だね。千花が夢中になるのは納得だわ。ファンも多そうだしね。」
「美馬がライバルになるのは嫌だなー。」
「その心配は必要ないから。」
良かった、と思いながら、休憩でベンチに座っている類先輩から目をそらせず、じっと見ていると、
「ちょっと、千花?大丈夫?熱中症にでもなってるんじゃない?顔真っ赤だよ。」
ミマの声が聞こえたが、その瞬間、俯いていた類先輩が千花の方を見て、しっかり目があった。え、嘘。目が合っちゃった。どうしよう。千花はドンドン頬が火照ってくるのがわかった。
「おーい、千花?」
ミマが必死に肩を叩いているのに気づいた。
「どうしよう、ミマ!類先輩がこっち見てる…。」
「わかったから、とりあえず水飲んで座ってて。私今何か冷たいの買ってくるから。」
走り去ったミマに、え、ミマ何?まだ行かないでよ。もう少し一緒に類先輩を見ていようよ。気がつくと、千花は、その場にしゃがみこんでしまっていた。暑い…。結構長い時間まともに日差しを浴びていたらしい。頭を触るとすごく熱くなっていた。
「大丈夫ですか?」
33のメンバーらしい男性が二人、千花の側に来て話しかけた。
「熱中症じゃない?ココで倒れられると困るんで、ちょっと建物の中に移動しようか?」
「立てる?」
手を指し出されて、いや、ミマがもうすぐ来てくれるから大丈夫なんだけど、触らないで。出された手を拒否する千花を見て、男性は日陰で見ていた女の子たちに声をかけた。
「ごめん、彼女熱中症っぽいから、部室で休ませたいんだけど、オレたち怖がられちゃってるみたいだから、悪いんだけどちょっと手伝ってくれない?」
声をかけられた女の子たちが嬉しそうに近づいてきて、手を貸して立たせてくれた。部室棟まで女の子たちが一緒に上がってくれて、部屋に入ると、椅子を進められ、男の人が冷たい液体をくれた。
「スポーツドリンクだから、安心して飲んで。彼女たちも、手伝ってくれたお礼にどうぞ。」
言われるままに飲むとポカリのような味で、確かにスポーツドリンクっぽかった。予想外にのどが渇いていたようで、ゴクゴクと飲み干すと、女の子の一人が聞いてくれた。
「大丈夫?」
「すみません。大丈夫です。なんか暑さとか考えず、夢中になちゃって…」
「分かるけど、日向で見るなら日傘くらいささないと真っ黒焦げになっちゃうよ。」
「そうそう。見学者が倒れると迷惑かけるから、今度からは気をつけなよ。」
「はい。本当に気をつけます。すみません。」
千花が素直に謝った。
「一緒に見てた背の高い子は?」
「あ、ミマ。多分購買に何か冷たいもの買いに走ってくれて…。」
「そっか。じゃぁ、私たちはそろそろ下に戻るね。」
連れてきてくれた女の子たちは戻っていった。しばらくすると、
「連れてきたよ、ミマさん。」
と男性がミマを連れてきた。
「千花!大丈夫?」
「ごめん美馬。大丈夫。」
ミマは千花の頭に購買で買ってきた氷をのせてくれた。
「冷たくて気持ちい。」
「これも飲んで。」
「さっきもらって飲んだからもう大丈夫。」
「さっきのは水だよ。水じゃなくてこっちの方が良いから。」
「大丈夫。ちゃんとここに来てポカリ飲ませたから。」
ポカリのペットボトルを見せながら、先程とは違う背の高い男性が言った。
「そうだったんですか。すみません。ご迷惑をおかけしました。」
「よくあることだから、気にしないで。」
千花の代わりに謝ったミマが顔を上げて男性を見ると、男性は笑顔で言った。
「ミマちゃん、やっと思い出してくれた?」
「長谷部先輩…?」
長谷部先輩ってどこかで聞き覚えがある。男性の顔をもう一度見直した。
「圭悟の知り合い?」
「あぁ、高校ん時の後輩。髪型違うから、一瞬わからなかったよ。ミマちゃんうちの大学だったんだ。」
「私も長谷部先輩がここにおられるって知りませんでした。」
「えー、そうなの?てっきりオレを慕ってここに来てくれたのかと期待したのに。」
「えっ!長谷部先輩って、あの2個上のバスケ部の超人気のあった?」
思い出したと同時に千花が言うと、楓は苦笑いで千花を見た。何でこんなに嫌そうなんだろう?
「ってことは、君も三高出身?」
千花が思いっきり頷くと、氷を入れたビニールが頭から落ちた。あっと思うと、ミマの手より早く、長谷部の手が先にそれを掴んだ。
「あぶねー。落としたら服濡れるよ。ミマちゃん、相変わらず良い瞬発力してるね。」
「すみません。」
「で?何?ミマちゃんも久々にバスケやりたくなってきたわけ?」
「そうなんですよ。ミマが久々にバスケやりたいって言うから、サークル見に行ってみようってなって今日来てみたんです。」
ミマが答える前に、話に乗ってしまおうと、千花は答えた。
「千花、何言ってんの?」
ミマの呟きを無視して、
「やっぱり、そうか。お前バスケめっちゃ好きそうだったもんなー。県大会もミマちゃんの代は結構いいとこまで行ったんだろ?経験者大歓迎だよ。」
長谷部は嬉しそうに被せて言った。やっぱり、この人、ミマ狙いだ。千花は、軽く睨んでくるミマにお願いと両手を合わせてウインクをした。ミマが否定をしようとしすると、ガチャっと部室のドアが開き、試合が終わったらしいメンバーが汗を拭きながら入ってきた。
「お前らまた部外者を部室に連れ込んで…藤山さんに怒られんぞ。」と入ってきた一人が千花たちを一瞥して言った。ミマを連れてきた男性が、
「いや、オレたちじゃないっすよ。ルイさんの指示でここで休ませてるだけですから。」と言うと、後から入ってきた類が
「あぁ、悪かったなノブ。休憩中に真っ赤な顔してぶっ倒れそうになってる子が見えたから、倒れられる前に運んでもらおうと思って、オレがノブに頼んだんだ。藤山さんも了承済。」と言った。あー、類先輩だ!と思うと、千花の側まで来て、顔を覗き込み、
「もう大丈夫そうだな。」と言って微笑んだ。千花はその声に顔を真っ赤にした。
「もう立てそう?」
とミマにつっつかれ、千花が頷くと、
「試合中にご迷惑をおかけしてすみませんでした。失礼します。」
ミマは千花の腕を取って、立たせようとした。
「ミマちゃん、まだ入部届書いてないよ。」と長谷部の声に
「入部?」と類先輩が呟いた。
「圭悟の後輩で、バスケ経験者らしいっすよ。」
「圭悟の後輩ってことは、三高?」
「三高って去年結構強かったんだよね?」と口々に話す人たちに、
「いや、あの入部希望っていうわけではなくて、千花に誘われてちょっと見に来ただけなんです。」とミマが言った。類先輩が千花を指しながら
「千花ってこの子?」と聞いた。名前を呼ばれて驚いている千花を横目に、ミマが
「そうです。」と答えた。
「とりあえず、ちょっとB棟のサロンで待っててくれない?オレたちシャワーして着替えたらそっち行くから。」と類先輩が言った。
「え?」聞き返すミマに、
「良い?千花ちゃん。B棟のサロンで待っててね。」と今度は千花に向って微笑んで言った。千花は頬を染めて
「はい。」と答えていた。