花とバスケと浴衣と
2.諦め
家に戻ると、明日ミマにどんな顔をして会えば良いのだろう?と千花は思った。千花のせいで、ミマは33のメンバーに完全包囲されている。ミマが嫌がるようなら今度は千花がミマを守ろうと心に決めた。夜、類先輩からメッセージが届いた。明日の昼食のお誘いだ。この人達本気なんだな、と千花は思った。でも、ミマに心配させてはいけない。明日はめいいっぱいおしゃれをして、類先輩との昼食を楽しみにしているふりをしなければならない。例えその昼食が、ミマを部室に連れて行くために仕組まれたものだとしても、ミマには気づかれないようにしなければ…。
翌朝、いつもより丁寧に髪を巻いて、気合を入れた服装で千花は学校へ向かった。既に教室に居たミマを見つけた。
「おはよう、美馬!」
「千花、おはよう。今日は一段と気合入ってるね。」
「変?」
「変じゃないよ。可愛い。デート仕様って感じ。」
「もー、美馬ってばー!」
無理やりテンションを上げて返事をすると、何々?デートなの?と興味津々の周りに始業のチャイムが鳴るまで質問攻めにあってしまった。1限が終わると、急いでミマの元に向かった。
「はい、美馬。これ忘れ物。忘れないうちに渡しとく。」
「ありがとう、千花。」
渡した紙袋の中身を確認すると、ミマは驚いた顔でつぶやいた。そうだよね…ごめん。わかってやってます。
「…ナニコレ?」
「美馬が昨日買ったポカリだよ。まだ開いてなかったからそのまま常温で置いてたけど、大丈夫でしょ?」
「コレは千花に買ったやつだから別に良かったのに…。てか、キャップは?」
やっぱりそうなるよね…と思いながらも、わざと聞き返す。
「キャップ?」
「私の帽子。」
「あー、帽子のキャップね。長谷部さんが預かっとくって言ってたと思うけど?連絡なかった?」連絡先は、結局ラインのIDだけを教えた。
「何で?何で長谷部先輩が預かるの?千花がいたんだから千花が預かるべきでしょ?」
「私もそう言ったんだけど、ルイ先輩が長谷部さんに渡しとけって言うから。ごめんね、美馬。」キャップじゃないとわかって肩を落としたミマに、千花は聞いた。
「ねー、美馬?藤山さんとは知り合いだったの?昨日何で急に走って帰ったの?」
「大したことじゃないの。ごめん、私、もう行かなきゃ。コレありがとね。」
次の授業は選択なので、ミマとは違う教室だ。ミマの目が少し泳いでいて、やっぱり怖かったのかな…それとも、何か言われたのかな?と心配になった。教室を移動しながら、千花は長谷部にラインを送った。
「1限目、ミマは登校してました。次は別の授業なので、授業後ちゃんと行くかわかりませんが、ミマなら多分行くと思います。」
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