部長は私を甘やかしすぎです!
第十六章
◯厨房
雫は枝豆と紙コップを厨房に持っていく
雫 「すみません。枝豆湯がいて紙コップに入れてください。できたら売り場の方へお願いします」
店員 「はい」
雫 (紙とマジックないかなー、あっそうだ)
雫は美咲の会社の車へ向かう
雫 「あの、紙とマジックないですか?」
美咲 (この子さっきの……)
「あるわよ」
雫 「貸してください。あっ、セロテープもいいですか?後で返しにきます」
雫は売り場に向かう
雫 (んー、いくらにしようかな300円、高いか、250円かなー)
竜二から電話がかかる
竜二 「雫ちゃんどこ?」
雫 「色々うろうろしてるから大丈夫です。落ち着いたら電話下さいね。あっ近くの店舗から枝豆を手配してください。厨房に持っていくように」
竜二 「わかった」
雫 「あの、枝豆をメニュー追加したのでこれ貼ります。茹で上がったら中から出てきますので」
売り子「わかりました」
雫 「お願いします」
ペコリと頭を下げて歩いていく
美咲のところへマジック等を返しに行き、また店舗に入っていく
雫 (多分、ここにあるはず)
雫はトイレットペーパーの予備を見つけて店舗外にあるトイレへ入っていく
浴衣のままトイレ掃除をしていく
雫 (一時間半はもつかな)
スタッフルームからゴミ袋とテーブルを拭くダスターを何枚か持って出る
備え付けてあったゴミ袋を変えていき落ちているゴミも拾っていき、空いた席のテーブルを次々と拭いていく
雫 「空きましたよ。座ってください」
テーブルを拭いては立っている人達に声をかけていく
コンテナが届いたようで男性社員が椅子とテーブルを作っていきお客は座っていく
雫 (間に合ったみたい(笑))
雫 「こちら空きましたよ。どうぞ」
一組の立って食べていた夫婦に声をかける
客 「ありがとう」
雫 「ごゆっくりどうぞー」
売り場に行く
雫 (飲み物……)
店の中に入っていく
竜二の電話が鳴る
真木 「部長どこですか?」
竜二 「地下の駐車場だ」
真木 「私、今来たんですが」
竜二 「どんな様子だ?」
真木 「まだお客さんは来てますね。私も今到着なのでこれからは仕事帰りの人が多いかもですね。帰ってる方もいますよ。地下で何をされてるんですか?」
竜二 「座る場所が足りないから近くの人にコンテナを借りたんだ。運んでる」
真木 「そうですか。では売り場の方を見て来ますね」
竜二 「頼む」
また電話が鳴る
真木 「部長、彼女は?」
竜二 「どこかでうろうろしてるはず、じっとしてることができない子だから……水色の帯を巻いてる」
真木 「わかりました」
雫は店に入って缶チューハイを二ケース台車に積んでレジを通してもらう
売り場のケースに入れる
売り子「チューハイ入った。もうすぐ交代だから飲もうよ」
売り子「うん」
雫は嬉しそうに台車を返しにいく
真木 (あっ、水色の帯、台車?)
真木は売り場を見る
真木 (チューハイが入ってる。あの間に……)
竜二 「山口、一度上へあがるぞ」
山口 「スタッフの交代の時間ですね。お弁当配ります」
二人は売り場に向かった
山口はスタッフに声を掛けて交代を告げていく
売り子「あの、さっきチューハイ入ったので呑んでもいいですか?」
竜二 「いつの間に」
売り子「さっき浴衣の子が入れていきました」
竜二 (雫ちゃんか、全く……)
汗を拭う
竜二 「構わないよ、呑んでくれ」
売り子「はい」
店員 「ビール届きました」
竜二 「山口、お前も弁当食っとけ」
山口 「はい、すぐ食べてきます」
雫はトイレへ向かい男子トイレに入っていく
竜二 (雫ちゃん、おいおい)
竜二は雫を見付けてトイレに急いでいく
竜二 「雫ちゃん!」
雫 「あっ、竜二さん落ち着きました?」
竜二 「スタッフが交代の時間だから一度上がってきたら男子トイレに入っていくのが見えたからさ」
汗をかいてる竜二にハンドタオルを渡す雫
雫 「お掃除してました(笑)。女子トイレもしてくるので少し待ってて下さい」
竜二 「浴衣汚れるよ」
雫 「大丈夫です、衛生面大事です。トイレ汚いと印象が悪くなります」
竜二 「わかった。待つよ」
雫がトイレから出てくる
雫 「二回したのであとは終了まで大丈夫です」
竜二は雫に抱きついた
竜二 「もう、参った」
雫 「竜二さん、みんながいます」
雫から離れる
竜二 「今山口に弁当食わせてる。もう俺らも食べよう」
雫 「はい!」
竜二 「雫ちゃん、名札持ってきてたの?」
雫 「はい、昨日帰りに持って帰りました」
竜二 「もう、なんだよ、予知能力でもあるの?雫ちゃん」
雫 「さあ(笑)」
二人は手を繋いで売り場に行く
山口がやってくる
山口 「戻りました。あっなんかすみません、部長をお借りして」
雫 「いえ、想定内ですから」
山口 「進藤さん達にもお弁当配ってきました」
竜二 「まだ詰めが甘いな、怒鳴ってしまった」
雫 「竜二さん、駄目です。お祭りなのに怒鳴ったらー」
雫はぷぅっと頬を膨らませた
竜二 「(笑)ああ、反省してる」
雫の膨らませたほっぺたを触る
雫 「紙とかマジックとか私、借りにいったんですからー」
竜二 「何したの?」
雫 「枝豆のメニュー増やしたので書いて貼りました。唐揚げが追い付かないと思って」
竜二 「この値段で?」
雫 「こういう時は売れるんです」
山口 「参りました」
竜二 「だろ?この祭りの案は俺じゃないからな、彼女の案だから」
山口 「そうなんですか?」
竜二 「俺はいつもの惣菜を売ろうと思ったんだけどな、ダメだって言うから……チューハイも入れたんだろ?」
雫 「女性は喜ぶかなと思って」
竜二 「喜んでたよ(笑)」
山口 「部長、食べてください」
竜二 「そうだな、財布出して」
二人はテーブルについて乾杯する
竜二 「お疲れ様」
雫 「お疲れ様です」
竜二 「食えないかもと思った。雫ちゃんに申し訳なくて、今度またゆっくり食事に行こう」
雫 「でも楽しいですよ」
真木 「部長」
竜二 「あー、やっと合流したよ」
雫 (綺麗な人……)
竜二 「雫ちゃん、俺の秘書」
真木は名刺を渡した
雫 「初めまして、若宮雫です」
雫は立ち上がって挨拶する
竜二 「今日のエステと浴衣、彼女が全部手配してくれた」
雫 「そうだったんですか?キレイにしてもらいました。ありがとうございました。」
竜二 「こーら、自分でキレイって言うな(笑)」
雫 「あっ、すみません。私のことじゃなくてお肌の事です」
竜二 「そっか(笑)」
真木 (部長がずっとニコニコしてる……)
真木 「こちらこそ、会社のイベントにお手伝いしていただいて助かりました。あと少しですがゆっくりしていって下さい」
真木はビールを二本置いていく
竜二 「待て、お前が出したんだろ?釣りはいい」
竜二は真木に千円を渡した
真木 「はい、では失礼します」
頭を下げて去っていく
雫 (竜二さん、行動もスマート)
雫はニコニコして枝豆をつまむ
父 「竜二」
竜二 「親父、母さん」
雫 (えっ!)
雫は立ち上がって頭を下げる
ゴクンと枝豆を飲み込む
雫 「若宮雫です」
父は雫に座ってと手を差し出す
雫はドキドキしながら座った
竜二 「来てたんだ」
父 「企画がお前の名前になってたから様子を見に来た。凄い人が集まったな」
竜二 「うん、でも日が足りなかった。もっと詰めなきゃ、甘かった」
父 「そうだな、来年はもう少し準備期間が必要だな」
竜二 「はい」
父 「彼女か?」
竜二 「うん」
父 「彼女が一番よく動いていた。客の動きをわかっていた。私達にも座る場所を作ってくれて声もかけてくれたよ」
竜二 「そうなんだ」
父 「裏も必要だけど表もちゃんと見るんだな」
竜二 「月曜日に今日のこと報告に行く」
父 「わかった。じゃあ帰るよ」
母 「竜二、父さんの後、母さんの所にも来てね」
竜二 「わかった」
二人は帰っていった
竜二 「雫ちゃん」
雫 「はい」
竜二 「雫ちゃんの家の挨拶より俺の方が先になった」
雫 「はい」
竜二 「月曜日、一緒に来てくれる?」
雫 「はい、ん?夜?ですか?」
竜二 「昼」
雫 「わかりました」
竜二 「九時だ、帰ってゆっくり呑みなおそう」
雫 「そうですね」
竜二 「せっかくの誕生日に働かせてごめん」
雫 「いいえ、私も名札入れて来ましたし、竜二さんだってそうでしょう?」
竜二 「不安は確かにあったから」
スタッフが片付けにとりかかり始めた
美咲 「竜二」
竜二 「美咲、お疲れ」
雫 「お疲れ様でした。マジックとかありがとうございました」
美咲 「こちらこそ、甘く見ててごめんなさい」
竜二 「美咲と話したの?」
雫 「さっき言ったじゃないですか。紙とかマジック借りに言ったって、イベント会社なら持ってるかと思って」
竜二 「元カノって言ったじゃん」
雫 「知ってますけど、必要だったから借りたんです。仕事中に元カノとか関係ありません。これからもいい企画をお願いします」
美咲に頭を下げる
美咲 「こちらこそ(笑)可愛らしいわね」
雫 「竜二さん、謝るんでしょ?」
竜二 「あっ、悪かったな怒鳴って」
美咲 「ううん、目が覚めた。ねえ、彼女企画に入れない?」
竜二 「駄目」
美咲 「そっか……じゃあ、またね」
竜二 「ああ……雫ちゃん帰ろうか?」
雫 「はい!」
竜二 「山口、帰るな。明日の朝様子見にくるから」
山口 「お疲れ様でした。ありがとうございました」
山口は深々と頭を下げた
二人はタクシーでマンションに帰る