部長は私を甘やかしすぎです！

第十九章

◯竜二のマンション

雫　　「明日何時に私は行けばいい？」

竜二　「昼前くらいに本社ビルに来て、受付には言っとくからタクシー使っていいからね、チケット渡しておく」

雫　　「わかった」

竜二　「指輪してきてね」

竜二は雫の指を触った

雫　　「ねえ、よくサイズわかったね」

竜二　「寝てる間にね(笑)」


ピンポーン

竜二が対応する

竜二は郵便物を開け雫に渡す

竜二　「これで生活費おろしてね」

雫　　「わざわざ口座作ったの？竜二さんがくれてもよかったのに」

竜二　「それも考えたけど雫ちゃんが家賃払うっていうからさ、この口座に入れとけば自動で引き落とすようにしたから」

雫　　「わかった。じゃあ管理します」

竜二　「足らなかったら絶対言って、自分で出さないでね。今度集まる時は後でみんなに少しもらうから」

雫　　「はい、ビールだけ買い物に付き合ってください。ケースで買うでしょ？」

竜二　「うん、わかった。じゃあバイトまでゆっくりしようよ」

雫に近付いてキスをする

雫　　「あのごめんなさい。やること沢山ある」

竜二　「えっ、何？洗濯物なら入れておくよ」

雫　　「夕食の準備と、えっと、じゃあバイトから帰って色々するのとどっちがいい？」

竜二　「んー、バイトから帰ってゆっくりかな？」

雫　　「でしょ？だから我慢して」

雫から竜二のほっぺにチュッとキスをした

竜二　「そんなことされたら我慢出来なくなるよ(笑)」

雫　　「っん、ダメ竜二さん」

竜二は長～いキスを雫にする

竜二　「ごめん、夜まで待つ……」

雫　　「はい(笑)」

雫は買ってきた物を片付け夕食の支度をしていた

竜二は本を読みながら時々雫に話しかけ、雫の足音を聞きながらソファーでうとうとする

雫は竜二にタオルケットをかけ静かにバイトに出掛けた


◯月曜日、サクラスーパー本社ビル

雫はビルの前に立っていた

雫　　「ここが竜二さんの仕事場……」

雫はビルの中に入っていった

雫　　「あの、若宮と申しますが……」

受付　「はい、こちらへ」

エレベーターの前に案内される

受付　「六階へお上がりください」

エレベーターが到着すると中に手招きされた

雫　　「ありがとうございます」

六階につくと目の前に真木がいた

真木　「いらっしゃいませ、こちらへ」

部屋に案内される

真木　「どうぞ、おかけ下さい。部長はもうすぐ来ますから」

雫　　「はい」

真木　「可愛いワンピースですね」

雫　　「あっ、昨日買ってもらいました」

真木　「指輪も左手の薬指なんですね」

雫　　「誕生日にいただきました」

真木　「いつでもあのエステも利用していいですからね」

雫　　「私には勿体ないです。贅沢すぎます。まだ学生ですから」

真木　「お若いですね、でも……」

真木は席を一度外した

化粧ポーチを持って戻ってくる

真木　「少し下向いて」

真木は雫にビューラーをしてくれ、軽くマスカラも付けてくれた

真木　「派手じゃなくていいから少し上げるとお顔も華やかに見えますよ」

雫　　「ありがとうございます」

真木　「若宮様も指輪もらったのなら少しは覚悟をなさらないと」

ニコッと真木は笑った

真木　「いつでも相談にのりますからね」

雫　　「はい？？」

真木は新しい口紅を渡した

真木　「この口紅ね、食事しても食器に着きにくいの、外での食事の時は使うといいですよ。どうぞプレゼントです」

雫　　「えっ、こんな高いものいいです」

真木　「この間手伝ってくれたお礼と誕生日プレゼントです」

雫　　「そんな、私何もしてません」

断っていると竜二が戻ってきた

竜二　「来てたのか」

雫　　「はい、あの……」

竜二　「ん？」

真木が口紅を持っていた

渡す素振りをみせる

竜二　「ああ、雫ちゃんそれ付けて」

雫　　「でも……」

真木がリップブラシを出して雫に口紅を塗る

雫　　「りゅ、ぶっ」

雫は大人しく口紅を塗られた

竜二　「それは彼女が雫ちゃんの為に選んだものだからありがたく頂くといいよ」

真木はにっこり頷いた

竜二　「色々教えてもらうといい」

雫　　(何を教えてもらうんだろう……)

真木　「お食事になりましたか？」

竜二　「ああ、それから直帰するから」

真木　「かしこまりました」

竜二　「何かあったら電話してくれ」

真木　「はい」

竜二　「行くよ、雫ちゃん」

雫　　「はい」

雫は立って真木に頭を下げて竜二についていく

エレベーターに二人は乗り八階を押す

雫　　「真木さんて綺麗ね」

竜二　「まあな、秘書はちゃんと資格持ってる人を雇ってるからな。マナーも身だしなみもキチンとしている。顔が綺麗というより立ち振舞いがちゃんと出来てると綺麗に見える。真木はもうベテランだからな」

雫　　「呼び捨てはよくないよ」

竜二　「フッ、会社はね、そういうものなんだよ。わかった？まあ、まだいいけどね」

雫　　「はい」

八階に付くと別の秘書から挨拶された

秘書　「いらっしゃいませ」

雫　　「こんにちは」

竜二は何も言わずドアをノックして開けた

雫がドアを入ると正面に竜二の父親が座っていた

父　　「やあ、いらっしゃい」

雫　　「あっ、こんにちは……あれ？」

竜二の方を見る

竜二　「ん？」

雫　　「お父様が……会社に？いらっしゃる……」

竜二　「うん(笑)」

三人は部屋のソファーに座った

父　　「この間は竜二を手伝ってくれてありがとう、竜二が私服だったからさっき理由がわかったよ。誕生日だったそうだね、おめでとう」

雫　　「あっ、ありがとうございます」

竜二　「仕方なかったんだよ、日が決まる前に夏休みを取ってたんだ。祭りのことはさっきこってり絞られたからもういいだろ？」

雫は机の上に置かれていた名札のプレートを読んだ

雫　　「あの、社長さんなんですか？」

立ち上がって名刺を渡す

雫も立ち上がる

雫　　(えっ、サクラスーパー代表取締役社長、真中文彦)

雫は隣の竜二の腕をつかむ

竜二　「どうしたの？」

雫　　「竜二さん、何も言ってくれないから……すみません全然知らなくて……」

父　　「何も聞いてなかったのかい？竜二が社長の息子ってことを？」

雫　　「は……い」

竜二は雫の腕をひっぱり椅子に座らせる

父　　「そうか、知ってて近付いたんじゃないっていうのが嬉しいよ」

雫　　「すみません」

父　　「なぜ謝るんだね？」

雫　　「私、自分の働いているところの社長の名前も知らなくて」

雫は頭を下げた

父　　「竜二、説明しなさい」

竜二　「彼女は若宮雫さん、サクラスーパー三沢店のバイトの子です。大学三年生です」

父　　「大学生？左手の薬指の指輪は？」

竜二　「誕生日にプロポーズして渡しました」

父　　「竜二、結婚は二人で決めるものか？」

竜二　「お盆が終わってから休みとって向こうの家に挨拶に行こうと思ってそれからうちに紹介しようかと思ってました。彼女は毎日夕方からバイト入ってるから夜時間が取れなくて、この間から一緒に住んでます。月曜日に休みにしてもらうように頼んだから……」

父　　「雫さん、実家は？」

雫　　「あの、二時間くらい大学までかかるので一人暮らししてました。すみません勝手に一緒に住んでしまって」

父　　「どうせ竜二が強引に言ったんだろう」

竜二　「うん、雫ちゃんは遠慮してたんだよ。全部俺が決めた」

雫　　「竜二さん急に話し方……」

竜二　「いいんだよ」

竜二は足を組む

父　　「竜二、来週にでも向こうの家に挨拶に行ってくるんだ」

竜二　「わかった」

父　　「大事な娘さんを預かるんだから順番が違うだろう？」

竜二　「うん、わかってる、雫ちゃんにも付き合う前に一緒に住んでって言っちゃった(笑)」

父　　「全くそういう所がまだ未熟者だ。雫さん、実家に連絡しておいてもらえるかな？わがままな息子だがこれからよろしくお願いします」

雫　　「いえ、竜二さんだけが悪いのではないです。私もすみませんでした。こちらこそよろしくお願いいたします」

父　　「竜二は甘えん坊だし強引だし苦労するよ」

雫　　(やっぱり甘えん坊)

竜二の方を見た

照れて下を向いている

雫　　「私も甘えん坊です。ねっ」

父　　「食事に行こう」

竜二　「母さんとこ行くから直帰にしたよ」

父　　「休みにしなかったのか？」

竜二　「夕方一店舗行くところがあるんだよ」

三人はエレベーターで一階へ降りた

竜二　「俺の車回してくるよ」

父　　「頼む」


二人きりになった

父　　「雫さん」

雫　　「はい」

父　　「竜二をよろしくお願いします」

雫　　「いえ、とても優しくしていただいてます」

父　　「竜二は二男なんだ」

雫　　「そうなんですか？」

父　　「まだ、竜二からは聞いてないんだね」

雫　　「そうですね……まだお互いまだまだ知らない事だらけで夕方から私がバイトに行くのでゆっくり話す時間もなくてですね……これからです(笑)」

父　　「私はやっぱり長男が継ぐものだと思ってたから長男がやりたい事があると大学の時に言ったときは正直びっくりしてね。でもまだ高校生だった竜二が後を継ぐと言ってくれて」

雫　　「高校生の時からですか？」

父　　「うん、まあ大学までは自由にやっていたが会社入ってからは必死でしてたみたいだね」

雫　　「それは聞きました。私、竜二さんは人の上に立てる人だと思いますよ。お父様に似てらっしゃいます」

父　　「そうか……じゃあ大丈夫かな、まだまだ心配なんだが」

車がやってくる

竜二　「雫ちゃんがお寿司好きだから寿司屋でいい？」

父　　「ああ」