部長は私を甘やかしすぎです!
第二十章
◯寿司屋
店主 「いらっしゃいませ、真中様」
雫 (廻らないお寿司屋さんだ。そして常連……)
竜二 「雫ちゃん、何がいい?」
雫 「私……わからない……」
竜二 「じゃあおまかせで、彼女にはウニとイクラつけて」
店主 「はい」
雫 「おいひい……です」
口にいっぱい頬張って嬉しそうに食べる雫
竜二 「可愛いだろ?」
父 「いくつ違うんだ?」
竜二 「八才違い」
父 「いくら年下だからって偉そうにするんじゃないぞ」
竜二 「大丈夫、そんな気持ちになんてならないから、いつも癒されてる。料理もすごく上手いんだよ。全然外食しなくなった」
父 「それはいいことだな」
雫は二人の話など耳に入らず店主に『美味しいです』と話しかけていた
父 「人見知りしないな」
竜二 「お客さんとも楽しく話してる(笑)いつも長い列が出来るんだ」
三人は食べ終えてレジ前へ
雫 「私の分出します」
父 「私が出すよ。気持ちだけ頂いておくから、ありがとう」
竜二を見る
竜二 「ご馳走さま(笑)」
雫 「ご馳走さまでした」
父 「また、食事に行こうな。今度は母さんも一緒に」
竜二 「母さんか……怖いな(笑)」
雫 「怖いの?」
竜二 「あっごめん今から行くのに……怖いっていうのは反対されるとか怒られるとかっていう怖さじゃないんだよ。自由すぎる人だからちょっと何を言い出すのかが怖いってこと」
竜二は車を運転して会社に父親をおろして母親の所へ向かった
◯本社ビル八階
秘書 「おかえりなさいませ」
父 「ただいま」
秘書 「コーヒー入れましょうか?」
父 「頼む」
秘書がコーヒーを持ってやってくる
秘書 「先程の女性は部長の彼女さんですか?」
父 「そうなんだよ」
秘書 「社長嬉しそうですね(笑)」
父 「可愛らしくてね、娘が出来た(笑)」
秘書 「お会いになったということは結婚が近いということですか?女子社員が悲しみますが(笑)」
父 「若いんだよ。まだ大学生らしいから結婚は卒業してからかな?でももう一緒に住んでるらしいからほぼ嫁だな」
秘書 「それは公表してよろしい情報ですか?」
父 「ここに連れて来たってことはいいんじゃないか?受付も通ってるし、隠したかったら家にくるんじゃないかな」
秘書 「そうですね、ではさりげなく(笑)でも受付の方がもう広まってるかもですけど」
父 「二男が先に嫁もらうのか……」
◯車の中
雫 「美味しかった~幸せ、お腹も一杯」
竜二 「寝ないでよ(笑)」
雫 「お酒呑んでないから大丈夫。お母様のところって竜二さんのお家?」
竜二 「いや、今の時間は教室」
雫 「教室?」
◯MANAKA
車から降りる
雫 「ヨガ?」
竜二 「そうヨガを教えてる」
雫 「へぇ意外、社長婦人なのに」
竜二 「母さんが好きなことするから兄貴も好きなことやりたいって言い出したんだよ。兄貴は母さんによく似てる」
雫 「お父様に少しだけ聞いた。竜二さんて二男なんだね。お兄様は何をしてるの?」
竜二 「通訳で世界を飛び回ってる」
雫 「通訳?素晴らしい仕事」
竜二 「まあ、頭は俺より良かったし英語もすぐ話せるようになった。興味があったんだろうね。今は何ヵ国語話せるかわかんないけど結構色々なとこに行ってるみたい」
受付 「あっ少々お待ちください、先生ー」
母が奥から出てくる
母 「後はお願いね」
受付 「はい」
母は自分の部屋に入っていく
母 「父さんと食事した?」
竜二 「うん、寿司屋行った」
雫 「若宮雫です」
母 「よろしくね、どうぞ座って、で?」
竜二 「彼女です。二十一才の大学生、先月から一緒に住んでます。以上、後は親父から聞いて」
母 「何よ、その言い方」
竜二 「だって同じこと何回も聞かれたくない、本当は一緒に紹介したかったのに」
母 「ワガママな息子でしょ?苦労するわよ?」
竜二 「昔の俺とは違う」
雫 「竜二さんはワガママではありませんよ、とても可愛がってくれます。優しいです」
母 「竜二がねー、オレオレじゃないのね?」
竜二 「もう、過去のことだよ」
雫 「ちゃんと私の意見も聞いてくれます。私のほうが贅沢な生活させてもらっていいんでしょうかって思います。申し訳なくて」
母 「いいのよ、竜二に甘えておけば……若い貴方だから甘えたいし、甘やかせたいのよ、竜二の自己満足なんだから」
雫 「竜二さんの自己満足?」
母 「そうよ、竜二はね大学までは結構お金も使ってたんだけど自分が働き始めてやっとお金の有り難さがわかったのか急に使わなくなってね、その竜二があなたにお金を使うんだからあなたはよっぽど好かれてるのよ」
雫 「でもお部屋も私の為に模様替えしてくれてこの間の誕生日にも浴衣とエステとパジャマと指輪もあっ、今日のワンピースも……頂いてばかりです。申し訳なくて」
竜二 「それは初めての誕生日だったから喜ばせたくて……夜もお祭りで安く済ませたし、雫ちゃんが遠慮しすぎなんだよ」
雫 「だって生活水準が違うすぎるもの、だから私なんて竜二さんの隣にいていいのかなって思うんです」
母 「いいのよ、そういう生活に慣れていけば……私だって子育て落ち着いてヨガ始めてはまっちゃって教室開くためにお父さんにお金借りて今は返したもの。自分がしっかりしてれば贅沢な生活しても締めることろは締めるの。じゃないと浪費家になったら困るわ。竜二は一番浪費女が嫌いだもの」
竜二 「だから雫ちゃんには俺の財産を預けられるって言っただろ?俺はプレゼントとか、食事には連れていっても、調子に乗ってねだる女は嫌いだからね、でも雫ちゃんのおねだりは全然聞くよ、好きな子の頼みだもん」
雫 「竜二さんがそれはお金持ちってオーラを出してるからいけないんだよ」
母 (おっ)
雫 「食事だってそんな高いこと連れていかなければいいし、車も高いの乗ってるからお金あるって思われるんでしょ?」
竜二 「そうか……まあでも昔はそういう場所に連れていって女を判断してるとこもあったしね、実際雫ちゃんはしっかりしてるし、ちゃんと料理するし、だいぶ食費が浮いてるよ」
母 「若いのに料理するんだ」
雫 「好きなんです」
母 「竜二がそんなにプレゼントをしたがる女の子に出会ったって事だから有り難くいただいときなさい(笑)趣味もあんまりないし、車しか興味ないんだから」
雫 「竜二さん無趣味?家では難しい本読んだりテレビ見たりくらいだよね」
竜二 「仕事やってたら本読むようになったかな~今は本読むのは基本好き。他にも趣味あるよ」
母 「何?」
竜二 「テニス」
雫 「でもテニス行くって聞いたことないし、ウェアとか洗濯もしたことないよ?」
竜二 「もうすぐ始めるよ。忍と一緒に毎年秋に大会があるんだよ。それに出るんだ。だから今度集まるの」
雫 「そうなの?」
竜二 「そう」
雫 「そういうことらしいです(笑)」
母 「雫ちゃんは趣味は?」
雫 「私はですね、家事全般です」
母 「珍しいわね(笑)」
雫 「何か家事してると落ち着くんです」
母 「私は苦手ね」
竜二 「雫ちゃんの料理は美味しいよ」
母 「今度食べさせてね」
雫 「はい!」
母 「ヨガは興味ない?」
雫 「ありますよ。背筋が伸びそうで気持ちよさそうです」
母 「よし、行ってみよう」
母親は立ち上がった
竜二 「えっ、おい!」
母 「これに着替えてきて」
雫 「竜二さん、私やってみたい」
竜二は時計を見た
竜二 「じゃあ一店舗顔出して仕事終わらせてくるからここにいるんだよ」
雫 「いいの?」
竜二 「母さんには逆らえない……母さん、雫ちゃんいじめないでよ」
母 「いってらっしゃい」
竜二 (はあ、さっさと仕事終わらしてこよう)
夕方、竜二が戻ってきた
雫 「あっ、竜二さんお疲れ様。お仕事終わった?」
雫は竜二の姿を見ると駆け寄った
竜二 「終わったよ、ヨガはどうだった?」
雫 「楽しかったです。これウェア頂いたの」
竜二 「通うの?」
雫 「うん、駄目かな?」
竜二 「月曜しか空いてないだろ?俺が雫ちゃんといたいのに……」
雫 「竜二さんが帰ってくるまでに終わるから、ここなら大学から電車で通えるし……駄目?」
竜二 「さっき、雫ちゃんのおねだりは聞くって言ったばかりだしなー、まあ、雫ちゃんがやりたいのならいいけど……母さんに無理やり言わされてない?」
母 「言ってないわよ(言ったけど)」
竜二 「わかった。でも月曜日教室終わってから雫ちゃんを誘わないでね」
雫 「今は夏休みなので夕方までなら来れます」
母 「いつでもいらっしゃい、私がいない時でも出来るように手配しておくわ」
雫 「ありがとうございます」
竜二 (まあ、楽しそうだし……いいか)
二人は車に乗りマンションへ帰った