部長は私を甘やかしすぎです!
第三章
◯雫の部屋
雫 「遊びだったのかな……」
携帯を眺める
雫 (あれから電話もメールもこない……忙しい人だということもわかってる……けど真中さんのこと信じていいんだよね。お話するの楽しかったしこの間のことは夢ではないよね……)
金曜日に竜二からやっとメールが入る
竜二 ‘ごめんね、中々連絡できなくて、明日の昼ランチでもどうかな?’
雫はすぐに返信する
雫 ‘はい、大丈夫です’
竜二 ‘じゃあ迎えに行くよ、家出る時にもう一度連絡入れるね’
雫 ‘はい’
(やっときた、嬉しい)
雫は携帯を何度も読み返していた
◯次の日の昼、おしゃれなカフェ
竜二 「三沢店の後の二店舗がなかなか個人面接が終わらなくてね、勤務体制がバラバラだし土日だけ出勤の人とかいてずっと休みがとれなかったんだ」
雫 「えっ、じゃあ一ヶ月お休みしてないってことじゃないですか」
竜二 「あー、まあでも間が三時間あいたり、午前で終わったりだけど雫ちゃんを誘ってて時間推してキャンセルするのも嫌だったから連絡できなかった。ごめんね」
竜二はそう言うと食事を口に運ぶ
雫 「顔色よくないですよ?寝てたほうがよかったんじゃないですか?」
竜二 「んーでも雫ちゃんに会ったほうが元気になるような気がして……ゴホン」
雫 「連絡なかったからやっぱりからかわれたのかと思ってました」
竜二 「ごめん、連絡したら会いたくなっちゃうから……心配だったよね?」
雫 「いえ、仕事なら仕方ないです」
雫 (真中さんは大人だ。ちゃんと仕事とプライベート分けてる。メールだけでもって思ってた私はまだまだ子供だ。それに真中さんが仕事終わった時間に私はバイトしてるんだから真中さんも気をつかっていたのかも……)
二人は食事を終えて店を出た
竜二 「これからどうする?」
雫 「あっ、私バイトの前に少し用事があるんです。真中さん今日は帰ってゆっくり寝てください」
竜二 「わかった、じゃあゆっくりさせてもらうよ」
雫 (しんどそうだもんね)
竜二は雫をアパートまで送っていく
雫 「ごちそうさまでした」
竜二 「じゃあまた」
雫 「はい」
竜二は次の約束もしないまま帰っていった
雫はバイト先に行く
◯サクラスーパー三沢店
店員 「あれ、若ちゃん、今日は先に買い物するの?」
雫 「はい、調味料とかなくなってきたんで、今日は先に買って一度片付けてからまた来ます。」
雫 (今日、真中さん咳してた。風邪ひいてる、時々喉おさえてたし、明日電話してみよう。あの部屋、何もなかったから、あっ、一つお鍋買っておこう)
雫はたくさん買い物をして荷物を一度家へ運ぶ
◯日曜日の朝
雫は携帯を見ていた
雫 (寝てたらごめんなさい!えいっ)
竜二に初めて電話をかける
竜二 「は……い」
雫 「真中さん、声変わってます」
竜二 「ああ、ごめんね」
雫 「風邪ひいてますよね?昨日咳もしてたし喉も押さえてたから気になって……」
竜二 「ふっ、さすがよく見てるね。コホッ」
雫 「熱でましたか?」
竜二 「んー多分?」
雫 「多分て何ですか?」
竜二 「体温計がないから……でも頭痛がするから出てると思う」
雫 「何も食べてないんでしょ?」
竜二 「……」
雫 「真中さん?返事して下さい」
竜二 「うん」
雫 「今から何か作りに行きますから」
竜二 「えっ、雫ちゃんに風邪がうつるよ」
雫 「大丈夫です。若いんで(笑)」
竜二 「ごめん」
雫 「待ってて下さいね」
◯竜二のマンション
雫 (えーと、何号室だったっけ?)
竜二に電話する
竜二 「はい」
雫 「すみません部屋番号忘れました」
竜二 「七0五号だよ。開けるね」
雫はエントランスに入り部屋の前でボタンを押す
竜二がドアを開けてくれた
雫 「大丈夫ですか?」
竜二 「じゃないね」
雫 「とりあえずベッドへ」
竜二 「すごい荷物だね?」
雫 「だって、この間来たとき何もなかったじゃないですか、鍋ないと料理できないし、調味料もないし、昨日咳しててしんどそうだったから今日は怪しいと思ってました。食べないと治りませんよ(笑)」
竜二 「午前中寝てみて何か買いに行こうかと思ってたんだよ、雫ちゃんに先を越されたな(笑)」
雫は竜二のおでこに手をあてる
雫 「熱ありますよ。ダイニング借りますね。あっとこれまず飲んで下さい。水分補給です。」
竜二 「ありがとう」
ペットボトルを受け取った竜二は一気に一本飲み干し雫に寝室に追いやられベッドに横になる
竜二 「ふぅ、参ったな。可愛いすぎだろ」
寝室のドアが開く
雫 「真中さん、卵粥と普通のお粥どっちがいいですか?」
竜二 「卵」
雫 「はい、すぐできますからね」
しばらくして雫が卵粥を運んできた
雫 「出来ましたよ。起きれますか?」
竜二 「うん」
体を起こす
雫 「熱いので気をつけて下さいね。あと薬は何がいいのかわからないので今から買ってきます。いつも飲んでるのとかありますか?」
竜二 「いや、何でもいいよ。熱が下がれば」
雫 「わかりました。じゃあ行ってきます。ゆっくり食べててください。」
雫は部屋を出て買い物に出掛けた
ゆっくり冷まして粥を口に運ぶ
竜二 (うまい!はあ、疲れがでたのかな)
ピンポーン
竜二はエントランスを開けてドアの前で待つ
足音がして玄関を開けた
竜二 「おかえり」
雫 「ただいまです」
ダイニングに食べた食器が置かれていた
雫 「食べれました?」
竜二 「うん、美味しかったよ」
雫 「じゃあ薬飲んで横になりましょうね」
買ってきた薬を開けて竜二に飲ます
竜二 「雫ちゃん、横にいて」
雫 「はい」
竜二はベッドに入るとすぐ眠ってしまった
雫 (ふふっ、可愛い)
雫はダイニングに戻り片付けを始める
雫 (炊飯器がないんだよね。本当に家で料理しないんだな。パックのご飯持ってきて正解)
グゥと雫のお腹の音も鳴った
雫 「もうお昼過ぎてる。私も食べなきゃ」
持ってきたうどんを食べ部屋の掃除、お風呂、トイレ、洗濯と家事をこなしていく
雫 「洗濯物干すところがない。あっ」
お風呂を覗いた
雫 「これが浴室乾燥かー、初めて見た。パンツとか靴下は?」
雫は洗濯機を見る
雫 (乾燥ってボタンがある。でも勝手に押して壊したら大変、あとで聞こう)
リビングに本や服、ビールの缶やお弁当の容器にスーツも出しっぱなし
雫 (あれから一ヶ月でこんなに散らかって……忙しかったんだろうな)
スーツを寝室に持っていきそっとクローゼットを開けてハンガーにかける
竜二の顔を見る
雫 (熱……少しは下がったかな?)
おでこに手をあてた
竜二が目をあける
雫 「あっ、ごめんなさい。起こしちゃった。どうですか?」
竜二 「よかった。まだいた」
雫 「はい、まだいました(笑)」
竜二 「薬が効いてきて少し楽になったよ」
雫 「あの、洗濯したんですが下着とか靴下はどうされてますか?」
竜二 「乾燥機」
雫 「使い方がわからなくて」
竜二 「電源入れて乾燥押してスタートで」
雫 「わかりました」
雫は部屋から出ていきボタンを押してもどってくる
竜二 「ごめんね、洗濯までしてくれたんだ。家事させちゃって本当にごめん」
雫 「そんなことないですよ。私家事好きなんです」
竜二 「いい子だね」
雫のほっぺたを優しく触る
雫 「まだ熱いですよ」
雫は竜二の手を触って布団に戻す
雫 「ちゃんとお休みとらないと体壊しますからね。せめて、土日のどちらかは休んでください」
竜二 「そうだね、仕事一段落したからこれからはゆっくり休むよ。雫ちゃんも何か食べた?」
雫 「はい、うどん買ってきてたので食べましたよ。真中さんの分もありますよ。バイト行く前に作りますね」
竜二 「今日はお金使わせちゃったね」
雫 「いえ、調味料とかこれから使うものばかりなので持って帰って使いますよ。大丈夫です」
竜二 「置いて帰ってもいいよ」
雫 「でも、真中さん料理しないでしょ?」
竜二 「雫ちゃんが作りに来てくれれば」
雫 「そんな、私の料理なんて、いつも美味しいもの食べてる真中さんのお口に合うかどうか」
竜二 「いつもなんて食べてないよ。俺だってスーパーやコンビニのもの買うよ。リビング見ただろ?今日のお粥美味しかった。もっと雫ちゃんの料理を食べたい」
雫 「ありがとうございます。もう少し寝てください。四時すぎに起こしますから」
竜二 「退屈でしょ」
雫 「大丈夫です。やること沢山あるので」
竜二 「わかった」
竜二が寝ている間、雫は家事をこなし時間になり寝室に行く
雫 「真中さん、起きてください。おうどんできましたよ」
竜二 「うーん」
雫 「体起こせますか?ダイニングで食べて欲しいんですけど」
竜二はゆっくり体を起こしてぼーっとする
雫 「大丈夫ですか?」
竜二 「ん」
竜二は立ち上がった
◯ダイニング
雫 「あの、土鍋もどんぶりもないので鍋焼きうどんなんですけど皿うどんです(笑)寝室に運べなくて……」
少し深めの皿にうどんと具がはいっていた。
雫 「熱いですからね」
竜二 「フーフー、ズルズル、ん!上手い」
雫 「よかったです(笑)」
竜二 「部屋も片付けてくれたんだね。ありがとう」
雫 「いえ、このくらい、食事のお礼ですよ」
竜二 「雫ちゃんは食べないの?」
雫 「私はお昼過ぎに食べましたよ」
竜二 「夜は?」
雫 「バイトから帰ってから食べます」
竜二 「一緒に食べたかったな……食べる時に誰かいるってやっぱりいいよね」
雫 「あの、真中さんはいつから一人暮らしを?」
竜二 「大学だよ。雫ちゃんと同じ大学」
雫 「そうだったんですね。それで大学の近くなんですね」
竜二 「まあ、親の金だけどね」
雫 「そうなんですか?」
竜二 「ごちそうさま、美味しかった!」
雫 「はい、汗かきましたよね。着替え持ってきます」
リビングに畳んであった洗濯物の中から持ってくる
雫 「あの、もう一度薬飲んでくださいね。あと熱ある間はお風呂駄目ですよ」
竜二 「わかった……雫ちゃん?」
雫 「はい?」
竜二 「今度の土曜日会える?」
雫 「あっ、はいわかりました。では、私はバイトあるのでこれで帰りますね」
竜二 「ありがとう」
雫は帰っていき竜二はベッドに横になった
竜二 (俺、今回マジかも……)
次の日竜二から‘復活したよ’とメールが入っていた
雫 (よかった……)