部長は私を甘やかしすぎです!
第五章
◯次の日竜二のマンション
合鍵を使ってそっとリビングに入る
雫 (わっ、ここで何人かで呑んだんだ。すごい空き缶の山)
持ってきた食材をダイニングに置きリビングを片付ける
雫 (灰皿も危ないなー、たばこに口紅のあと……女の人もいたんだ。空き缶にもついてる。そりゃ竜二さんはモテるだろうし女友達も沢山いるだろうな)
リビングのカーテンと窓を開けた
片付けていると寝室のドアが開き上半身裸の男の人が出てくる
雫 「キャッ!」
男 「わっ!びっくりしたー」
声に驚いて竜二も寝室から出てくる
竜二 「何だ、どうした?」
両手で顔を覆っている雫がいた
竜二 「あっ、忍、服着ろ」
忍に服を渡す
忍 「んー、シャワー借りる」
忍は浴室に向かった
竜二 「もういいよ。雫ちゃんごめんね、びっくりさせたね。あいつ、いつの間に服脱いだんだろう?俺も忍出たらシャワーするから、雫ちゃん?俺は服着てるから手のけて大丈夫だよ(笑)」
雫は手をのけると真っ赤な顔をしていた
竜二 (純情だな~)
雫 「すみません、ちょっとびっくりしてしまいまして」
竜二 「あっ、部屋片付けてくれたんだね。ごめん」
雫 「静かに片付けてたんですけど、私の声で起こしちゃいましたよね」
竜二 「いや、いいよ」
忍がシャワーから出てくる
雫 「すみません、さっき驚いてしまって」
忍 「んー、いいよ。こっちもごめんね。まさか人がいるなんて思わなかったから」
竜二 「シャワーしてくる」
竜二は浴室に行き忍と二人になる
雫 「あの、若宮雫といいます。よろしくお願いします」
忍 「俺は川合忍、よろしく。いつも遅くなったら竜二のとこに泊まらせてもらうんだ」
雫 「そうなんですね。あっ、何か飲みますか?」
忍 「あー、水もらう」
雫 「はい」
ダイニングから水を持ってきて忍に渡す
忍 「ありがとう」
リビングのテレビをつけてソファに座る
雫は鍋焼うどんの準備をする
忍 「あー、いい匂い、腹減ってきた」
ソファから立ち上がって対面キッキンに寄っていく
忍 「何作ってるの?」
雫 「あっ、鍋焼きうどんです」
忍 「へぇ」
雫 「多分二日酔いだから消化がよくて胃に優しいもののリクエストがありまして」
忍 「竜二から?」
雫 「はい!あの……川合さんはお家遠いんですか?」
忍 「うん、少しね。呑んだら終電逃しちゃうから……昨日は二次会のあと、六人くらいでここに押し掛けて飲んでたから久しぶりに酔ったな。あっ、忍でいいよ」
雫 「はい、そうなんですね。ちゃんと忍さんのも用意しておいてと言われてましたから」
竜二 「さすが竜二(笑)」
竜二がシャワーから出てくる
竜二 「暑っ」
雫 「お水どうぞ」
竜二 「ありがと」
と言うと雫の頭をなでる
雫 「暑いのならおうどんもう少し後にしますか?」
竜二 「うん、忍に先に出してやって」
雫 「はい、わかりました。じゃあ忍さん、用意しますね」
ダイニングに雫は引っ込んだ
竜二 「お前さっそく名前呼ばれてるし」
忍 「自己紹介してくれたから忍でいいよって言ったんだよ」
雫がリビングのテーブルに運んでくれた
雫 「はい、どうぞ。熱いので気をつけて下さいね」
忍 「いただきます」
竜二 「雫ちゃんも先に食べていいよ」
雫 「はい、ではお先にいただきます」
雫はダイニングの方で食べる
忍 「うん、旨い!胃にくるな」
竜二 「だろ?あったまるだろ(笑)」
忍 「なあ?」
竜二 「ん?」
忍 「若いけど、彼女でいいんだよな?」
竜二 「ああ」
忍 「昨日、一言もそんなこと言ってなかったのに……お前の場合は家政婦とかあり得るから」
竜二 「昨日から付き合いだした(笑)」
忍 「お前、もしかしてヤってからとか?」
竜二 「よせよ、昔とは違う。まだ何もしてないよ。純粋過ぎて手が出せない。さっきの見てわかるだろ?男の裸が恥ずかしいんだぞ、どう考えても男慣れしてないだろ」
忍 「マジか~お前がなー、昨日美咲も久しぶりに来てたじゃん。普通に話してたけど……」
竜二 「あー、自然消滅……お互い社会人になって仕事忙しくて、全然連絡しなくなったかな。今まで飲み会も来なかっただろ?あいつも仕事に余裕が出てきたんじゃないかなー。みんないるのに無視はできないだろ?それにたばこ吸ってたし……俺たばこ吸う女無理なんだよ」
忍 「それは昔から言ってたな」
竜二 「そう、付き合ってる時にちゃんと言ってるし、俺はこれから雫ちゃんに癒されていくんだ」
忍 「いい年した男が若い女の子にメロメロかよ(笑)全く」
竜二 「そうだなー、出会っちゃったなー」
忍 「彼女いくつ?」
竜二 「二十歳、大学三年、俺らと同じ大学」
忍 「若っ!でも寝室模様替えしてたな」
竜二 「昨日した。明るくなっただろ?リビングも変えるよ。雫ちゃんといると明るい部屋に変えたくてなー、そのうち一緒に住むつもり」
忍 「マジなんだな。絶対同棲はしなかったお前がもう合鍵渡してるし、家入れてるのに手だしてないって……俺泊まれなくなるな」
竜二 「部屋もう一つあるから大丈夫。いつでも来いよ」
忍 「はぁ、こうも変わるものかねー。大学の時、お持ち帰りし放題だったお前が?」
竜二 「しーっ」
忍 「美咲と付き合ってても浮気してたのに?」
竜二 「若かったんだよ。大学卒業してからはそんなに遊んでないぞ。仕事必死だったからな」
忍 「そんなに……ね、誘われたら断れないくせに」
竜二 「もう、大丈夫!この間ひどい風邪ひいてさ、看病に来てくれて、もう俺はズキュンときたわけよ。まだ出会って二ヶ月くらいなんだけど、俺から言うの初めてなんだよ」
忍 「まあ、お前の場合は金目当てと顔目当てだったからな」
竜二 「まーな、社会人になってからは金目当てがさすがに多かったな」
忍は食べ終わった鍋をダイニングに持っていく
忍 「ご馳走さま、美味しかったよ」
雫 「はい、ありがとうございます。竜二さん食べますか?」
リビングに向かって声をかける
竜二 「食べる」
雫 「はーい、すぐ支度しますね」
雫は鍋焼きうどんを運んでくる
雫 「どうぞ」
竜二 「ありがとう」
雫 「あの」
竜二 「何?」
雫 「昨日、たばこの吸殻あったんですけど、吸うのはいいんですけど、灰皿を流しに置いて水をかけて置いて下さいね。危ないですから」
竜二 「わかった。気をつけとく」
雫 「(笑)お願いします」
ダイニングに戻っていった
忍 「意外と言うのな」
竜二 「うん、ワガママは言わないけど必要なことはちゃんと言える子だよ。すごく周りが見える子なんだ。家事が好きで、胃袋もつかまれたという(笑)」
忍 「俺はもうしばらく一人でいいや。実家だし飯には困らないから、楽だな」
竜二の電話が鳴った
雫が気づいて寄ってくる
雫 「お仕事の携帯ですね」
竜二 「うん、もしもし、お疲れ様です。はい、はい、対応は?わかりました。今から伺います」
雫は寝室に入っていきスーツの支度を始めた
寝室から出てくると
雫 「スーツ用意してますから」
竜二 「ありがとう。忍、仕事だ。駅まで送る」
忍 「わかった。サンキュー」
竜二は洗面所で支度を整えた後着替えを終えた
雫 「竜二さん、夕食は?」
竜二 「何か作ってくれるなら家で食べる」
雫 「じゃあ、作って置くので時間になったら私バイト行きますね」
竜二 「ごめんね、ゆっくり出来なくて」
雫 「お仕事ですから(笑)」
忍が先に玄関に行くと竜二の革靴が磨かれて用意されていた
忍 (いつの間に……昨日は革靴なかったのに……ふっ、そういうところか、竜二が惚れたのは)
竜二が支度を終えて玄関にやってくる
忍 「お邪魔しました」
雫 「こちらこそ、たいしたお構いも出来なくて」
竜二 「じゃあ行ってくる」
雫 「いってらっしゃい」
二人は玄関を出ていった