部長は私を甘やかしすぎです!
第六章
二人が出掛けて一人になる雫
雫 「さて、やること一杯あるな。何からしよう」
雫は頭の中で考える
雫 (まずは、肉じゃが作って部屋の掃除、お風呂とトイレかなー)
雫がリビングを片付けているとイヤリングの片方を見つけた
雫 (片方だけかな?昨日の人の忘れ物だよね……もっと前とかだったらどうしよう…………信じなきゃね……)
雫はメモを残してバイトに出かける
雫 『竜二さんへ、イヤリング片方落とし物です。昨日の人なら返してあげてください。不便だと思うので、あと肉じゃがお鍋に炊いてます。お仕事お疲れ様でした』
雫 (よし、帰ってバイト行こう。少ししか話せなかったなー、やっぱり一緒に住んだほうがバイト終わってからも朝も話はできるよね。甘えていいのかなー)
雫は鍵を閉めて竜二のマンションを後にした
夜七時、竜二がマンションに帰ってくる
竜二 「意外と手間取ったな」
鍵を開けて家に入る
シーンとした中入っていく
竜二 「いて欲しいな……」
メモを読む
竜二 (イヤリング?誰のだ。美咲?綾?)
スーツを脱いでスウェットに着替える
竜二 「肉じゃがー」
一人なのに思わず声を出した自分に驚いた
肉じゃがとビールを持ってリビングへ
竜二 (旨い~)
テレビを見ていると玄関の鍵がガチャガチャと音をたてた
竜二 (ん?エントランスは鳴ってないし、雫ちゃんはバイトの時間)
ピンポーン
モニターを見る
竜二 (はぁ、美咲か)
イヤリングを持って玄関に行く
美咲 「あっ、いたんだ」
竜二 「ああ」
美咲 「鍵、やっぱり変わってたね」
竜二 「これだろ?」
美咲にイヤリングを見せる
美咲 「あ、見つけてくれたの?探しに来たの上がっていい?」
玄関で靴を脱ぎはじめる
竜二 「勝手に入るなよ」
美咲 「昨日は入れてくれたじゃないの」
竜二 「昨日はみんないただろ?」
美咲 「昨日ほったらかしで帰ったから片付けに来てあげたのに」
スタスタとリビングへ上がっていく
竜二 「おい!」
美咲 「片付いてるじゃない」
竜二 「もう、来なくていいから……イヤリングもわざとだろ?今日来る口実の」
美咲 「どうかな?(笑)昨日久しぶりに楽しかった。ますますいい男になってるし。ねえ、やり直さない?」
美咲は竜二に抱きついてキスをしようと近づく
竜二 「いや、お前とはもう終わってるから」
美咲を押して自分から離れさせる
竜二 「俺、付き合ってる彼女いるから帰ってくれないか」
美咲 「彼女いたんだ……わかった」
玄関を出ていった
竜二 (意外とあっさり引いたな。エントランスの番号変えよう。雫ちゃんの誕生日にするかな……もうすぐだ)
竜二は雫にメールを送る
竜二 ‘雫ちゃん、お疲れ様。今日はゆっくりできなくてごめんね。今、肉じゃがとビール呑んでます。エントランスの番号かえたから次から間違えないでね0804だよ’
九時過ぎて返事がくる
雫 ‘お疲れ様です。休日出勤ご苦労様でした。番号了解しました。お休みなさい’
◯別の日、雫の家
雫がお風呂に入っていた間に竜二からメールが入っていた
竜二 ‘今帰って晩酌中~、旨い~、布団干してくれたんだね。暖かかった。無理しないでね、俺はとっても嬉しいけど’
写真つきで送られてきた
雫 ‘お疲れ様です。竜二さんの為を思ったら家事も楽しくてついやっちゃいます。やり過ぎだとおもったら言ってくださいね’
竜二 ‘全然!助かる。おかずが美味しすぎてビールがすすむ。運動しなきゃ(笑)’
雫 ‘暑くなってきましたからね、ビールの美味しい季節です(笑)飲み過ぎないように’
竜二 ‘はーい、お休み’
雫 ‘お休みなさい’
雫 (これが付き合うってこと?メールだけで緊張する。何かおかしなこと書いてないかな)
雫は一人で真っ赤になっていた
雫 (写真可愛い……保存しよっと)
◯土曜日、竜二のマンション
ピンポーン
竜二 (ん?美咲はもう入れないはずだしエントランスじゃなく玄関が鳴った)
モニターを見ると布団が写っていた
ドアを開ける
竜二 「ぷっ、可愛い雫ちゃんという荷物が届いたね」
竜二はシーツとカーテンを雫から受けとる
雫 「すみません。荷物が一杯でボタンは押せたんですがドアが開けられなくて」
竜二 「言ってくれたら取りにいくのに」
雫 「私が引き換えもってましたから」
竜二 「ありがと、しまっておく」
雫 「はい、お願いします」
竜二 「雫ちゃんこっち来て」
雫 「はい?」
竜二 「この部屋使っていいからね。荷物運んでくるといいよ。雫ちゃんの部屋」
雫 「でも、竜二さんの仕事部屋では?」
竜二 「ううん、物置いてただけ。基本家では仕事しないようにしてる。パソコン一台あれば大丈夫だよ。少し狭い部屋だけどクローゼットあるから大丈夫だと思うよ。何か大きい荷物ある?」
雫 「いえ、そんなには」
竜二 「いつでも運んでいいからね」
雫 「本当に私と住んでいいんですか?」
竜二 「うん、いいよ。荷物運んだらアパート解約していいから」
二人はリビングに行く
竜二 「布団も俺運ぶからね。いつでも言って。今日はリビングの模様替えしよう。雫ちゃん午後からくると思ってたけど早くきたから出かけるよ」
雫 「あっはい、ちょっとこれ冷蔵庫にしまってきます」
雫は買ってきた食材を冷蔵庫にしまう
◯大型家具店
雫 「何買うんですか?」
竜二 「カーテンとソファーと絨毯、カーテンは寝室は変えたけどリビングは陽が当たるから厚めのがいいから、ここで買うつもりだった。ソファーも座ってみて」
雫 「私、ソファーなんてあまり……よくわからないです。座椅子しかないので」
竜二 「だから座って確かめるんだよ」
二人は順番に座っていく
店長 「いらっしゃいませ、真中様」
竜二 「ああ、店長。今日はソファーとカーテンと夏用のラグを買いにきたよ」
雫 (すごい、顔パスで店長自ら……竜二さんてすごい人なんだな)
竜二 「全部配達して今あるもの持って帰ってくれる?」
店長 「かしこましました。何からお探ししましょうか?」
竜二 「じゃあ、絨毯から。雫ちゃん行くよ」
雫 「はい」
竜二 「夏は素足で気持ちいいのがいいな」
雫 「今はスリッパですよね」
竜二 「うん」
店長 「広さは全面にいたしますか?」
竜二 「雫ちゃんどうする?」
雫 「言ってもいいんですか?」
竜二 「いいよ」
雫 「ダイニングでスリッパ履きたいのでリビングもスリッパがいいです。ソファー周りだけ夏用のラグがあれば……」
竜二 「じゃあソファーの大きさによって後で決めよう。ソファー前に床に座れてソファーにもたれるくらいだよね」
雫 「はい!」
竜二 「じゃあカーテン行こう」
三人はカーテンコーナーへ
雫 「中の遮光カーテンはしっかりしたものがいいです。あっこれ夏らしい水色でグラデーションになってる」
竜二 「じゃあ、これで(笑)」
店長 「はい、カーテンは今のを冬に使われますか?」
竜二 「いや、また冬は見にくるよ」
店長 「かしこまりました」
竜二 「サイズはわかってるよね?」
店長 「はい」
竜二 「雫ちゃん、ソファー行くよ」
雫 「はーい」
店長 「明るい方ですね(笑)」
竜二 「だろ?一緒に住むんだ。だから明るく模様替えしたくてね」
雫 「レザーはやっぱり高いですね。掃除はしやすいですけど」
竜二 「レザーでいいよ。少し明るめで茶色かアイボリーとか、黒以外でね」
雫 「ソファーに竜二さんが一番座るんだから決めてください」
竜二 「横になれて雫ちゃんに膝枕してもらうくらいの大きさが欲しいな」
雫 「もう~こんなところで、恥ずかしいです」
竜二 「これくらいかな~」
雫 「はい」
竜二 「じゃあラグも明るい色のものを」
店長 「これくらいはいかがでしょう」
雫 「いいかもです」
店長 「ありがとうございます。真中様、配達はいつにいたしましょうか?」
竜二 「雫ちゃん、来週の予定は?」
雫 「来週は日曜日の昼間なら大丈夫です」
竜二 「じゃあ、それで」
店長 「かしこまりました」
二人は店を出た
◯竜二のマンション
竜二がリビングから呼び掛ける
竜二 「雫ちゃん、土曜日用事あるの?」
雫 「はい、オープンキャンパスがあって、お手伝いをしないといけなくてですね、友達と一緒にするんですよ。その後食事に行くのでバイトもお休みいただいてます」
竜二 「じゃあ、金曜日にバイト終わったらこっちに帰っておいでよ。ここからなら歩いて大学行けるだろ?自転車は呑んだら乗れないし」
雫 「あー、そうですね。そこまで考えてませんでした(笑)」
竜二 「荷物夏休みに運んでね」
雫 「はい」
カレーがダイニングテーブルに置かれ、竜二は移動した
竜二 「いただきます」
雫 「いただきます」
竜二 「旨い!ねえ、雫ちゃんはいつから料理するようになったの?」
雫 「そうですねー、私の母が弟を産んだ頃ですね。高齢で産後も調子が悪くて自然とするようになって……中学くらいですね」
竜二 「いくつ離れてるの?」
雫 「十二才です。私産まれた後、二人目なかなか出来なかったみたいで……弟の離乳食も作ってました。食べてもらえるのが嬉しくて」
竜二 「雫ちゃんてさ、商品のバーコードの位置どこにあるか覚えてるよね?」
雫 「えっ、何で知ってるんですか?」
竜二 「だって、バーコード通しながらお客と話してるでしょ?」
雫 「そこまで見てたんですか?」
竜二 「そりゃ、雫ちゃんを見てたんだからね。列が早くはけるのは何でかって思ったもん。雫ちゃん見てると改善するとこが浮かんでくるんだよ」
雫 「母が調子悪い時、レジに並ぶのが辛いみたいでなるべく早くと思ってて……」
竜二 「俺としてはそういう貴重な意見が欲しいんだよね。女性にしかわからないことまだまだ沢山あると思うんだよね。また聞かせてほしいな……あっ雫ちゃんを利用して付き合ってるんじゃないよ。そこは勘違いしないで、本当に好きだからね…………ご馳走さま」
竜二は真っ赤な顔を隠すようにリビングに向かった
竜二 (俺、好きだって言っちゃった。何で今さら照れるんだ?あー、恥ずかし……自分で言うの恥ずかしいな、今まで軽く言ってたから何とも思わなかったけど本気でって……)
竜二は後ろをチラッと向いた
雫は両手で赤くなったほっぺたを押さえていた