部長は私を甘やかしすぎです!
第七章

◯サクラスーパー本社ビル

竜二の席に内線電話がかかる

竜二 「はい、真中です」

受付 「一階受付です。部長にお客様です。アポはとってないそうです。名前は進藤美咲様という方で名刺をお持ちです。お通ししますか?」

竜二 (美咲?)
   「いや、下に降りる」

受付 「かしこまりました」

部長室を出ると専属の秘書で真木という女性が座っている

竜二 「受付に客が来てるから行ってくる」

真木 「はい」

エレベーターを下りると受付が立ち上がり美咲の方を手で案内する

竜二は受付に軽く手をあげて、ありがとうと声をかける

竜二 「美咲?何か用」

美咲 「今日はちゃんと仕事の話よ。こちらのスーパーで夏休みイベントをしてもらえないかと思って」

企画書を竜二に見せる

竜二 「俺は総務の人間なんだけどな、企画に言えよ」

軽く書類をめくっていく

美咲 「そうなの?でも知り合いから入るのもいいでしょ?使えるコネは使わなきゃ(笑)じゃあ、企画の人に会わせてよ」

竜二 「全くお前は……」

美咲 「そっちにとっても集客できるからいいでしょ?」

竜二 「企画の人間が駄目だと言ったら俺の名前出しても駄目だからな」

美咲 「ありがとう竜二、あっ部長(笑)」

竜二 「ちょっと待ってろ」

竜二は企画部へ顔を出す

竜二 「山口!ちょっと来てくれ」

山口 「はい」

竜二 「今一階ホールにイベントの企画を持って来ている会社がいる。会って話を聞いてやってくれないか?」

山口 「部長のとこに行ったんですか?」

竜二 「ああ、大学時代の友人だ。俺に関係なく企画部として駄目なら断ってくれて構わない。ちゃんと言ってあるから」

山口 「はい」

竜二 「企画部長には言うなよ」

山口 「はい、行ってきます!」

竜二は自分の部屋に戻った

竜二 「悪い、コーヒーを頼む」

真木にそう言って椅子に座る


暫くして山口が部屋を訪ねてきた

山口 「あの、一応企画書をコピーしてきました」

竜二 「別にそっちで進めてよかったのに」

山口 「一応、いい企画ではあったので意見を伺いたくて、アドバイスとかいただけたら」

竜二 「アドバイスねー、さっき軽くは目を通したんだがな。まあ集客はできるがどの店舗でやるかを決めないと……夏祭りねー」

山口 「全店舗は難しいかと思います」

竜二 「だろうな。広い店舗とうちの商品が売れなければ何もならない。イベントだけ開いても場所貸すだけじゃな」

山口 「今晩呑みに行きませんか?日がないので詰めたいんです」

竜二 「わかった。後で店は連絡する」

山口 「はい、失礼します」

竜二 「これをもう一部コピーしといてくれ」

真木 「はい」


竜二はコピーを受け取り

竜二 「今日は直帰する」

真木 「かしこましました」

竜二は二店舗を回り時計を見た

竜二 (汗かいたな、一度帰って着替えるか)


◯竜二のマンション

雫の靴があった

音がして雫が玄関に出てくる

雫  「どうしたんですか?体調でも?」

竜二 「いや、飲み会が入ったから直帰にしたんだ。仕事早く終わったから着替えようと思って、シャワーするよ」

雫  「はい、スーツですか?」

竜二 「いや、社内の後輩だから、シャツだけでいい」

雫  「わかりましたー」

竜二はシャワーから出てきた

竜二 「何作ってたの?」

雫  「酢豚です」

竜二 「俺の好物だ」

雫  「じゃあ冷めてから冷蔵庫入れときますから明日食べてくださいね」

竜二 「味見したい」

雫  「じゃあもう少し待ってください」

暫くして出来立ての酢豚が出された

竜二 「いただきまーす。熱っ、旨い!」

雫  「よかった(笑)」

竜二 「あっ、これ読んでみて」

企画書を渡す

竜二 「気付いたことあったら書いて……旨い…今日企画の後輩と呑むんだけどアドバイスくれって言うからさ、女性目線とかない?」

雫  「夏祭りですかー、そうですねー、人は集まりますけどこれだけじゃ……」

竜二 「うちの商品を売らないと意味ないだろ?まだこれはイベント会社の企画だけなんだ。これからうちがどういう風に持っていくかなんだよ。日がないからね」

雫  「ですねー、主婦目線ならもうここで夕食は済ませたいなと、子供が遊べるものがないと……子供が行きたいって言わないと親は動きませんからね。ビールは絶対必要だし、神社のお祭りなんかは屋台が出ますけどそれならうちで唐揚げとか出せますしね。いつものお惣菜の中から何品か作って食べれますよね」

竜二 「イベント会社の企画だからそれぞれの売上も分けないといけないしな」

雫  「ですねー、出来れば食べる場所も広く取れば売れるんじゃないですかね。日があるなら二週間3000円以上お買い上げの方にガラガラくじが引けるように抽選券配ったら当日前から売上も伸びますし、子供はくじを喜びますよねー」

竜二 「何でそんなにアイデアが出てくるの?」

雫  「えっ、やってるとこありますよね?旅行券が抽選で当たるとか……でも普通に景品でお米五キロとかビールを一ケースとか嬉しいですよ(笑)」

竜二 「雫ちゃんおかわり」

雫  「はい(笑)」

おかわりの酢豚を持ってくる

雫  「屋台の唐揚げって高いじゃないですかー、でも買っちゃうんですよね。うちのお惣菜を出してるパックはやめて白い上が開いてる入れ物とかトレーとかにしたほうがいいですよ。串で食べやすいようにとか持って帰る人には袋渡してあげて、いつものパックだと量と金額がだいたいわかってしまうでしょ?店からどんどん作って出せば温かいの食べれるし」

竜二は食べながら頷いていた

竜二 「ご馳走さま、これからちょっとまとめる」

雫  「はい(笑)」

竜二は雫の言ったことを書き出していく

雫  「あっ」

竜二 「何?」

雫  「雨の日のことも考えておいて下さいね」

竜二は急いでメモした

雫  「駐車場もどこか借りれるなら……」

竜二 「ほぼ雫ちゃんの企画だね(笑)俺も総務なのにいいのかな」

雫  「でも、頼まれたんでしょ?慕ってくれていいじゃないですか?」

竜二 「ありがと」


◯山口と個室のある居酒屋にて

山口 「部長、人集まりますよー」

竜二 「だろ?」

山口 「明日すぐまとめてうちの部長に通しますね。日があまりないので、通ったら進藤さんに連絡します」

竜二 「上手くいくといいな(笑)」

山口 「はい!酔う前にもっと詰めといていいですか?」

竜二 「だな」


◯竜二のマンション

竜二 (呑みすぎた)

冷蔵庫をあける

マグカップにスープが入っていた

ダイニングテーブルにメモが置いてあった

『朝スープ温めて飲んで下さいね 雫』

竜二 (ふっ、可愛いすぎるだろ)

水を飲み干して寝室に向かう

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