太陽と月の物語
朝の太陽 真昼の月

♢side 太陽



企画課には太陽と月がいる。

「春川さん!夏新作の会議、明後日10時からスタート!会議室押さえて!」
「明後日……ってことは10日ですね。承知しました」

企画課長の指示に私はすぐさま立ち上がった。簡単な仕事は早いうちに済ませてしまうのが、私の中の決まり。あとで絶対、忘れるから。

私は会議室1に向かい、ドアノブに引っ掛けられていたノートを手に取る。うちの会社は今時にしては珍しく、めちゃくちゃアナログな会社だ。ノートはA4サイズの手帳になっていて、予約したい日時に使用目的と予約者を記入する。

私は、春川朝陽(はるかわあさひ)。
今年で28歳になる(株)桜酒造 企画課の事務員だ。

染めたこともパーマを当てたこともないロングのストレート髪を簡単に黒いゴムで一つに束ねただけ。一応常識として薄っすらと塗っただけのメイク。“朝陽”という爽やかで清々しい名前に完全に名前負けしているOLだ。

そんな私だが、何故か企画課の太陽と呼ばれている。

< 1 / 121 >

この作品をシェア

pagetop