太陽と月の物語
空に誓う愛
♢side 月
3年後。
「空(そら)。ここにお水入れてくれ」
「あいっ!」
3歳になった息子が元気いっぱいに返事したあと、柄杓でバケツの水をすくった。
「そうだ。ここにジャバーってして」
「ジャバー!」
「ちがーう!」
息子、空が柄杓をひっくり返したのは、墓前に供える花筒ではなく、あろうことか、俺と空の足元だった。おかげで、どちらも服と靴がびしょ濡れだ。
「ちゅめたーいね。パパ」
「風邪ひいたらどうすんだよ、空」
悪気がない息子は楽しそうにケタケタ笑うが、俺は荷物の中からタオルを探すのに必死だ。
「あれ?真月ビショビショじゃない」
呑気な声を上げるのは煙を上げる線香を持った朝陽だ。
「パパ、ビショビショ〜」
ベージュのチノパンは水を吸って色が変わってしまっている。
「お漏らしみたいになってるじゃない」
と、朝陽は吹き出す。
「きのうの空くんといっちょだね〜。パパ」
「一緒だね〜空くん」