太陽と月の物語
三年前の12月24日。
聖なるクリスマスイブに我が子は誕生した。
1月から奈良県の工場に転勤になることが決まり、部下に引き継ぎをしているとき陣痛が始まったとの知らせを受けた。俺は仕事をほっぽりだして、奈良県に向かったのだ。
『頑張ってくれ。朝陽』
俺が病院について陣痛に苦しむ朝陽にそう言って手を握ってからは、あっと言う間だった(あっと言う間だと感じたのは当事者じゃないからだと朝陽には怒られるけど)。
まるで俺が病院に来るのを待っていたかのように、空は誕生した。元気な男の子だった。
母子ともに健康と聞いた俺は、無事に産まれてきてくれたことに安堵し、康晴さんや真紀子さんの前で崩れ落ちるように泣いた。
年末年始の休みに入ると、多くの人が空の誕生を祝いにやってきてくれた。
俺と朝陽の両親。将大さんに、その子どもの陽輝(はるき)ちゃん。そして将大さんから話がいったらしい晃さんも来てくださった。
それから、話を耳にしたらしいアサのご両親となんと、宮端さんもお祝いの品を持って、遠くから来てくれた。
朝陽は自身の母親から、妊娠を黙っていたことを怒られた。一因は俺にもあるため、朝陽と一緒に頭を下げて、これから3人で幸せを築いていくことをみんなの前で誓ったのだ。