太陽と月の物語
朝陽がつけてくれた線香が消えないうちにお墓に手を合わせる。
朝陽と俺を真似て空も手を合わせた。
心。
お前はすごいよ。お前なら迫るあの車の前から逃げられたのに、愛する人を守ることを選んだ。
朝陽が生きることを、その幸せを願っていた。
アサ。
お前の最期の言葉って、今思えば、朝陽と心が事故にあったときに叫んだ『朝陽っ!!』って悲鳴だったんじゃないかな?
お前は最期まで大好きな親友のことを心配していたな。
朝陽のお姉さん。
将大さんとの結婚式でしか会っていませんが、あなたが最期まで妹の幸せを願っていたと伺いました。
誰もが朝陽の幸せを願っていた。
みんなもう帰ってこない。
追いかけても捕まらない。
大切な3人が朝陽に残したもの。
それは哀しみじゃなくて、きっと“愛”だったんじゃないかと思う。
朝陽が幸せでありますように。
願いの奥に秘めた大きな“愛”。
今度は俺が朝陽を守る。愛していく。
大丈夫。大切な人がこの春風を浴びて何処かで見ているから。もう手放したりしない。
瞳を開けば上には大きな空が広がっている。この大空に誓う。
「朝陽。愛してる」
「どうしたの?急に」
蕾が綻ぶような艶やかなその笑顔を、今日も守っていく。
*fin*