太陽と月の物語
「ねぇねぇ」
麻子が内緒話のように小声で私を呼ぶから、耳を近づけた。
「何?」
「朝陽ってさ、心くんと……」
「ん?」
「……したの?」
まさか、こんな公衆の面前で、小声とはいえそんなことを聞いてくるとは思わなかったから、私は真っ赤になって狼狽えた。
「え、したって……えっと、それ」
「うん……その、エッチ……なこと?」
聞いてくる麻子本人も恥ずかしいのか、モジモジしている。
「ま、まだだよ」
「……キスは?」
「キスは……した」
クリスマスに初めてのキスをしてから、何度かキスはしてきた。でも、それ以上は進んでいない。
心くんもそれなりにそういうことに興味はあるみたいだけど、お互い初めてだし、最初は痛いって聞くし、避妊に失敗したら……って考えると怖いし、でなかなか先には進めなかった。