太陽と月の物語
ふと視線を周囲へ向けると、丁度、向かいの歩道から噴水のある歩道へ道路を横切ろうとする心くんが見えた。
「あ。心くんが来た!」
私は彼が来たのが嬉しくて、横断歩道にいる彼の元まで駆け足で向かう。
「心くん……!」
「朝陽。おはよ……っ!?」
見上げた心くんの顔が青ざめる。
耳を掠めたのは、車が加速する音……。
「危ない……!」
叫び声が誰のものだったか分からない。心くんだったか、それとも噴水前にいた真月か、麻子のものだったか……。
私が心くんの視線を追って、振り返ったとき、猛スピードの車は目の前に迫っていて……。
「朝陽……!」
心くんに抱きしめられたと思ったその瞬間。嘘みたいにスローモーションで体が宙を浮いた。
空を舞う感覚。半年の記念日に相応しい青空が少し近くなったように感じた。
次の瞬間、身体に衝撃を感じる。
痛い……!息ができない!
手に触れるのは……血?
誰の?私?それとも心くん……?
ゆっくりと瞳を開けると、車は噴水にぶつかって止まっていた。
噴水……?
あそこはさっきまで私がいた場所。
麻子は……?真月は?
さっき私の名前を呼んだ心くんは……?
薄れていく意識。視界は霞んで何も見えなくなっていくけれど、それでも何か大変なことに巻き込まれたのだということだけは分かった。