太陽と月の物語

連れてこられたのは真月の家だった。

「っ……あさ!」

玄関で噛み付くようなキスをされた。

真月はうわごとのように、何度も何度も麻子のことを呼ぶ。目の前の人間が誰か分かっていないのかもしれない。

それでいい。
私は麻子の身代わりになるのだから。

「真月……」

真月はベッドを軋ませながら、横たえた私の上に覆いかぶさってくる。性急な彼の手は服をたくし上げ、痛いぐらいの力で胸に触れてきた。

……この天井の景色を麻子も見たのだろうか。
心くんが生きていたら、今頃、私の上にいたのは心くんだったのだろうか。

余計なことを考えたくなくて、私は強く瞳を閉じる。

優しさのカケラもないその行為に私の瞳から溢れる涙がシーツを濡らした。
その涙は初めて知る痛みからなのか、それとも心くんと麻子を裏切ってしまったという罪悪感からなのか……。

『でもね。すごーく、幸せだったよ』

……麻子。
縋り付くというのが正しい私の“初めて”は、幸せとはかけ離れていた。
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