太陽と月の物語
「また告白断ったらしいですよ」
やっと1日が終わったと事務作業で凝った肩をほぐしていたら隣で制服から通勤服に着替えていた後輩が言った。就業時間を終えた女子更衣室でのことだ。
「八幡主任?」
「そうです!今度は秘書課一の美人らしいです」
女子更衣室では度々、八幡真月の名前が噂される。大半が真月が告白されたが、いつもの如く断ったという内容。
「またいつものあれ?」
「そうです。“夜の関係だけでいいなら付き合ってやる”ってやつです」
後輩ちゃんが全く似ていない八幡真月のモノマネをする。どう突っ込んでいいのか分からなかった私はスルーして制服のブラウスを脱いだ。
「でも不思議ですよね。八幡主任、顔もいいし仕事もできるし、とってもモテるのに、どうして告白を断るのですかね?」
「何か事情があるのかもね」
その疑問に対する憶測には色々なものが飛び交っている。
昔、女に酷い仕打ちにあったせいで未だに女性不信だとか。実はとても溺愛している女性が密かにいるとか。はたまた、彼の恋愛対象は男性につき、女性はお断りだとか。
本当の理由を私は知っているのだが、それは私から話すことじゃない。だから、私は周囲に合わせて不思議そうな顔をする。