太陽と月の物語
♢side 月
夜眠ることが怖い。
何度も同じ夢を見るから。
親友も恋人も夢も全てを失ったあの日の夢。
いっそ夢だったらいいのにと目覚めるたびに失望する毎晩。一度夢から目覚めるともう眠ることはできないから、俺はふらりと外へ出る。両親は共働きで、夜に誰もいないことなんてしょっちゅうだから、家を抜けるなんて簡単だ。
見知った土地は事あるごとに亡くなった2人を思い出させる。
そういやここにも4人で来たな。
昼間時々現れる移動販売のクレープ屋の列に並ぶために訪れた公園。
そこに見知った人影を見かけた。
麻子と心を失ってから、話す機会がなかった朝陽……。
朝陽はぼんやりとそこに佇んでいた。何を見る訳でもない。ただただ、遠くを見つめていた。その姿は、そのまま静かに消えてしまいそうなほど、脆く儚くて……。
女1人がこんな時間に出歩くとか危険過ぎる。しかも、あんなにぼんやりした無防備さは、たとえ誰かに襲われても文句は言えない。