太陽と月の物語
「あさ……」
本当は違うと分かりながら、つい数ヶ月前に抱きしめた温もりを探してしまった。
名前すら呼ばず、痛みに歪む顔にキスを上げることもせず、罪悪感から溢れる涙を拭ってあげることもせず……。
最低な形で、朝陽の“初めて”を奪ったあの日から15年。
俺たちの関係は28歳になった今でも続いている。
地元から離れたくて全寮制の高校へ進学した俺と朝陽。大学もわざと実家から遠く離れた場所を選び、一人暮らしを始めた。
地元から離れるとあの事故を知っている奴なんていない。だからこそ、孤独な夜は朝陽に縋り付いた。
就職先が同じだったのは偶然。
中学からの付き合いのせいか、朝陽はそつのないサポートをしてくれる。
誰にも俺達が中学からの付き合いだということは教えていない。
だから企画課の“太陽と月”として知られる俺たちの本当の関係を知っている人はいないと思う。