太陽と月の物語
もちろんと言ってはなんだが、俺が抱いてきた女は朝陽以外にも沢山いる。そのことを朝陽に咎められたことはない。
「最低なことをしている自覚はあるんだ……」
行為のあと、疲労から眠りについてしまった朝陽の寝顔を見て、ひとりごちる。
恋人にもしない。でも朝陽を手放すことなんて出来ない。
その息遣い。その温もり。その甘い声。石鹸の香り。柔らかい肌。
朝陽は生きている。あの事故にあい、それでもなお、生きている。抱くたびに感じるその事実に、俺は何度も救われてきたから。
「朝陽。お前、いい加減、恋人を作れよ……」
そしたら解放できるのに、あいつは恋人を作らない。男がいない訳ではないと思う。
それは朝陽を抱いていたら分かる。いくらシャワーを浴びたって、他の男が残した気配は消えないし、あいつが他の男とホテル街に消えていく姿も見てきた。
朝陽は本来、そんなふしだらな女じゃない。恐らく、事故があいつの人格を変えてしまった。
変わってしまった朝陽がいつかのあの遠い目をして、俺の前から消えていくことが怖くて。
大切なひとがあっけなくこの世を去ったあの日の虚しさをもう二度と感じたくなくて。
俺は今日も朝陽を呼びつけるのだ。