太陽と月の物語
心くんを亡くしてから、特定の恋人はいない。真月に呼ばれない日はこうして、体だけを求めてくれる男のひとと夜を過ごす。逢瀬はいつもホテルの一室だ。
「アキラさん……っ!」
「色っぽいよ。アサちゃん」
私が選ぶ相手はアキラさんみたいに意気消沈していた人ばかり。夜を一緒に過ごすうちに、アキラさんの顔にも笑顔が戻ってきてくれた。
麻子と心くんが亡くなり、生き残ってしまった私ができる唯一の償い。
「……なんで、アサちゃんはこんな娼婦みたいなことしてんのさ」
行為のあと、アキラさんはタバコを吸いながら私の髪を撫でてくる。
「お金は受け取ってないから、娼婦じゃないです」
「そうだけどさ。実際、俺はこの時間のおかげで救われているんだけどさ」
「だったらそれで良いじゃないですか」
アキラさんは私のことを知りたがる。一見、真面目そうな私が恋人を作らず、フラフラしているのが気になるらしい。