太陽と月の物語

「ねぇ、アサちゃん。ホワイトデーは空いてるの?」
「空いてません」
「うわ。即答!」

あの日から15回目のホワイトデー。
その日はいつも、真月と過ごすと決めている。

「バレンタインのお返しにデートに誘おうと思ったのに」
「チョコなんてあげました?」
「くれたじゃん。チロルチョコ」

そういえば、鞄の底にあったチョコあげたな。くれくれってうるさいから。

「ホワイトデーは他の男とデートなの?」
「デートじゃありません」
「他の男と会うことは否定しないの?」
「……しません」

真月と私が沢山の大切なものを失った日。生涯、忘れることが出来なくなった初恋は今でも私達の首を絞めつけている。

「……寝ます」
「えー。もう一回しよ?」
「いやです……」

これ以上の追求は避けたくて、私はアキラさんに背中を向けた。アキラさんは私の拒絶を絶対に聞こえているはずなのに完全に無視して、触れてくる。その巧みな愛撫に静まっていた熱が再燃した私は、ため息をつきながら結局アキラさんを受け入れた。
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