太陽と月の物語
私の実家は電車で1時間程で帰省できる。最寄駅が普通しか止まらない所が曲者だけど、その分、乗客は少なく基本的に座席に座れる路線だ。
だけど、働き出してからは殆ど帰省していない。年々、変わっていく町の中に、変わらない思い出を見つけては切なくなるからだ。
『駅が改修工事終わったの!まだ見てないでしょ?見に来なさい』
産休中の姉は暇なのかひっきりなしに送られてくるライン攻撃に根負けし、久しぶりに地元の駅に降り立ったのは、3月の第2日曜日だった。
「お帰り。朝陽」
「ただいま!うわっ。お姉ちゃん、すごいお腹!」
駅までお迎えに来てくれたのは姉本人だった。臨月だという姉のお腹はもうはちきれんばかりに大きくなっていた。
「歩いて大丈夫なの?」
「いいのいいの。むしろ、健康のために歩きなさいって言われているくらい!」
姉は相変わらず、明るい人だ。私と違って声も大きく笑顔が絶えないから、周りの空気も明るく変えてしまう。
「ほら。帰るよ。お母さんもお父さんも朝陽が帰ってくるのを楽しみにしてたのよ」
「そうなんだ」
「もうちょっとしたら、将大もくるのよ」
将大は姉の旦那さん。
最近、真月とも仲がいいと知ったかつてのガキ大将だ。