太陽と月の物語

実家に帰ると、両親が久しぶりに姉妹が揃ったと大喜びだった。

「朝陽ももっと頻繁に帰って来なさいよ」
「ごめん。忙しくて」

嘘だ。帰ろうと思えばいつだって帰れた。親不孝だと思いながらも帰れなかったのは、ここに来れば嫌でも過去と向き合わないといけなくなるから。

「会社はどう?」
「楽しいよ。それなりに」
「朝陽の会社の日本酒、この間、飲んだぞ」
「どれ?“SAKURA ”?」
「そうそう。スッキリとした味わいで呑みやすかった」

“SAKURA ”は真月が企画したもので、過去一番の売り上げを上げている。

「その商品企画のプレゼン資料作ったんだよ」

本当は真月の指示通り、資料の一部のグラフとかを作成しただけなんだけど、話を若干盛ってみると、両親は嬉しそうな顔をした。

「その商品って真月くんの企画なんだって?将大が言ってた」

そうだった。姉の旦那さんである将大さんは、真月と仲がいいんだった。

「そうだよ」
「真月くんって……もしかして」

真月と同じ会社だということを知らない母は驚いた声を上げる。父の方は真月の名前にピンと来ていないみたいだったが……。

「そう。麻子の恋人の八幡真月だよ。うちの会社の企画課の主任なの」
「やっぱり……!」

父もそこで合点がいった様子。

「あの事故に巻き込まれた子か?」
「そうよ。将大の友人なの。私の結婚式にも来てくれていた」

姉が補足説明をしてくれた。そういえば、姉と将大さんの結婚式に真月がいて、私は大層驚いたんだっけ。

あの無口でそっけない真月にも、ちゃんと友人がいることに少し安心したんだ。
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