太陽と月の物語
母特製の炒飯を昼食に食べ、片付けを終えた頃、姉のスマホが震えた。
「あ。もうすぐ、将大が来るって」
「将大さんって車?」
「そう。近くのパーキングに止めるって言ってる」
週末にわざわざ来るとか将大さんってマメだなぁと思っていると「よし!」と姉がいきなり立ち上がる。
「お迎え行ってくる!朝陽行くよ」
「え。私も?」
「妊婦を一人で行かす気?」
さっき、一人で駅まで私を迎えに来たのは誰だという反論はまぁあったが、別に忙しい訳でもないし大人しくついていくことにする。
3月にしては暖かいため、カーディガン一枚羽織れば充分だった。
「お迎え行かなくても将大さんなら家まで来れるんじゃないの?」
だって、同じ小学校だよね?
「ちょっとでも、早く会いたいから迎えに行くに決まってんでしょう!」
姉は照れ臭そうに笑って、私の肩を叩く。
ああそう。ご馳走さまです。
「仲いいんだね」
「そういうアンタはどうなの?いい人いないの?」
「いい人ねぇ」
麻子と心くんは居なくなったのに?
真月がまだ、15年前に囚われたままなのに?
私一人、幸せになんてなれないよ。