太陽と月の物語

「え。朝陽。晃くんのこと知ってるの?」

驚いた様子の姉と将大さん。私だってびっくりだ。普段、体だけの関係を続けているアキラさんが姉や将大さんと繋がりがあるなんて。

「お姉ちゃん。アキラさんを知っているの?」
「知ってるも何も、将大の部下じゃない」
「そうなの!?」

アキラさんが勤めている会社の名前って知らない。私が知っていることっていえば、アキラって名前と失恋して仕事でミスして左遷されて人生ドン底真っ只中ってことぐらい。

「まぁ、こいつ今倉庫に移動になったから、正確には元部下なんだけどな。親戚の法事がこの街でやるって言うから途中まで送ってやった」

初耳だ。その情報を既に知っていたら、私はわざわざ義兄の部下なんかと関係を持たなかったのに!

「で?お二人さんはどういう関係?」

……当然、その質問来ますよね。

「……んーと」
「……えーと」

アキラさんも私同様、言葉が出てこない様子。そりゃそうだ。時々、体を重ねるだけの関係なんて言える訳ない。

「……飲み仲間よ。そう、飲み仲間!」
「そうです!俺が移動になった倉庫近くのバーで出会って、最近よく一緒に飲むようになったんです」

時々、誘われたついでに、バーでご飯を一緒に食べてお酒を飲んだりするから、間違っていないはずなんだけど。回答までに微妙な合間が空いたおかげで、姉も将大さんも怪訝そうな表情を浮かべる。

「じゃ、俺、もうすぐ法事が始まるんで。門川課長、送っていただきありがとうございます!」

そして、アキラさんはそそくさと逃げた。
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