太陽と月の物語

「ごめん。時間ないから先行くね」

まだメイク中の後輩に断って、更衣室を出た。
走るのははしたないし疲れるから、やや早歩きで駅まで向かいちょうど目の前にやってきた電車に飛び乗った。

電車に乗っている間に晩御飯のメニューを考える。家の主より多分冷蔵庫の中身を把握している私。
豆腐があったはずだから、今日は豆腐の味噌汁。メインは……手短に出来る豚キムチでもしよう。
真月は辛いのが好きだから。

真月の家の最寄駅に降りてIC定期券を改札にかざす。真月の家は私の家の一つ手前の駅だ。

駅前のスーパーで必要な食材を買い、真月の家に向かった。駅から家まで徒歩10分ほどの10階建てマンション。三階の角部屋が真月の部屋だ。

彼が一人暮らしを始めるときに渡された合鍵で部屋に入ると、玄関は真っ暗だった。まだ主は帰っていないことに安堵する。

とりあえず、ベランダの窓を開けて、篭った空気を逃すと大慌てで料理を始める。味噌汁を作る為に水を沸かし、出汁をとる。豚肉を炒めそろそろ火が通ったかなというくらいで、真月が帰ってきた。

「お帰り。ご飯まだだから、先にシャワー浴びといて」
「ん」

多くは話さない真月は小さく反応を返してくれた。今日は外出の予定がなかった彼は長袖の麻のワイシャツにチノパンとラフな格好だ。部屋着だけ持ってそのまま風呂場へ直行した。

火が通った豚肉の上に勢いよくキムチを入れた。豆腐とワカメを入れ味噌を溶かして味噌汁の完成。ご飯は冷凍保存していたものをレンジでチン。

豚キムチを盛り付け、ご飯と味噌汁を並べたぐらいに真月が出てきた。
< 5 / 121 >

この作品をシェア

pagetop