太陽と月の物語
姉の突然の死から、夫である将大さんは急激に痩せてしまった。
もうすぐ子供が生まれるという幸せの絶頂からの急降下。
まだ子どもは入院中。将大さんは真月を連れて飲みに来たらしい。
将大さんの視線は私とアキラさんの繋がれた手に移される。
それに気づいたアキラさんが口を開く。
「将大さん。俺、アサちゃんとの中途半端な関係を卒業します。全力で口説くことにしました」
「ちょっと、アキラさん……!」
「まだ恋人じゃないんだ?」
手を繋ぐ私達に将大さんは不思議そうな顔をする。
「今はまだ俺の片想いです」
苦笑いをしたアキラさんが私を見下ろす。
「でもいつか、落としてみせます」
なんの宣言なんだ。
バーテンダーさんも気になるのかこっちを見ているではないか。
真月も真っ直ぐ私の目を見てきた。薄暗いバーの中じゃ彼が何を思っているのか分からないけれど。
他の男の人といるところを見られたくなかった。
「行こうか、アサちゃん」
アキラさんに手を引っ張られる。
その私達の背中を突然声が追ってくる。
「朝陽。明日、20時な」
真月の声だった。