太陽と月の物語

意外にもアキラさんの家は私の家のすぐ近くだった。

「ごめん、全然片付けてないから狭いかも」
「いやいや、私の部屋より広いですよ」

ベッドで占領されているワンルームの私の部屋に比べたら、リビングの他に寝室があるアキラさんの部屋は広いと思う。

確かにソファに脱ぎ散らかされたTシャツとかテーブルに広げられた新聞とか、部屋の所々に生活感は感じられるけれど、それは汚いとは違う気がした。許容範囲内。

「コーヒー?紅茶?どっち派?」
「あ。コーヒーでお願いします」
「うん。砂糖とミルクいる?」
「両方欲しいです」
「オッケー」

ちょっと待っててね、とアキラさんはキッチンと思われる部屋に消えた。

時間を持て余した私はさりげなく部屋を観察した。カーテンとかクッションなんかは緑色に統一されている。テレビの横には大きな本棚があって、本が綺麗に並んでいる。仕事で使うビジネス本なんかが大半だ。

真月以外の男の人の部屋に入るのは、これが初めてだ。真月の部屋はもっと殺風景で色もモノトーンで統一されているけれど、この部屋は所々目につく緑色のせいか、温かみを感じる。

「コーヒー出来たよ。朝陽」
「……え」

今、朝陽って……。

自分の名前なのにこんなに聞きなれないなんて、可笑しな話。
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