太陽と月の物語
「朝陽なんだろ?本名」
「そうだけど……」
アキラさんは私の前の白いテーブルにマグカップを置いた。私が望んだ通り、ミルクが入っているようだ。
「俺は安村晃(やすむらあきら)。29歳」
「春川朝陽。28歳です」
今更、自己紹介をする私達。
初めて会ったときにはここまで深く関わることなんて思っていなかったから、適当に「アサ」としか教えなかった。でも朝陽という名前はバレているのだから、名字を名乗っても差し支えない。隠したってきっとそのうち、将大さん経由でバレる。
「朝陽って呼んでいい?」
「さっき呼んでたじゃないですか」
「そうだけど、一応確認」
わざわざ聞いてくるあたり、マメだなと思う。
「嫌って言ったら?」
意地悪で聞いてみたら間髪入れずに答えが返ってきた。
「拗ねる」
「え」
「あの男には呼ばせてたじゃん」
ソファに座る私の隣に座ってきたアキラさんは余りにも自然に私を抱きしめてきた。
「え、いやいや、今日はなんにもしないんじゃ……」
「これぐらい許してよ」